VOICE
Vol.1
戸田:大阪は東京と比べて企業数自体は少ないものの、実は老舗といわれる企業は東京と同じくらいあります。YRK&の本社も大阪にあり、図らずもそうした歴史のあるクライアントとの取引が多く、その創業年数を平均すると90年以上にもなります。私たちのビジネスの強みとは何かを考えたとき、そうした歴史のある企業とのコミュニケーションが得意なのではないかと気づいたのです。企業の古き良き部分を活かしながら、新しいコミュニケーションやプロモーションを提案できないか。それがリ・ブランディング事業立ち上げのきっかけです。
上野:私が物心ついた頃はちょうどバブルの時代で、日本は世界一になれる国だと確信していました。ところがバブルが崩壊して経済が低迷し、中国のGDPが日本を追い抜き、メイド・イン・ジャパンの信頼性すらも揺らいできています。プランニングの仕事をやりたいと思ったきっかけでもあるのですが、日本をかつてのようにもっと元気に、豊かにしたい。リ・ブランディングを通して、元気のない日本企業やブランドを再生するお手伝いをしたいと考えています。
戸田:歴史のあるクライアントほど、新しいことをリスクと捉えたり、一歩踏み出そうとするときに多くの理屈が必要だったりします。縦割りの組織体質で話が前に進まないことも多く、まずは社内の全部署をラテラルにつなぎ、コミュニケーションがスムーズにいく風通しのいい環境をつくることがリ・ブランディングの第一歩です。120年以上の歴史があるYRK&だからこそ、老舗企業の抱える課題を理解しやすい部分もあります。
上野:企業の一部署が独断で進められることではなく、企業全体、社員全員の意識が変わっていかないとリ・ブランディングはうまくいかない。すべての社員が同じ問題意識や危機感を持ち、改善に向けて力を合わせて変革していこうと思えるような判断基準を作ることがストラテジックプランナーである私の役割でもあります。
戸田:ブランディングというと、だれもが使いやすい言葉ですが、人によってその捉え方がまったく違います。ブランドを変えることに前向きなクライアントもいれば、抵抗を示されるクライアントもいます。そのため、どのような手法を用いるか、どのようにコンサルティングやファシリテーションを行うか、クライアントごとにプロジェクトのデザインを考えないといけない。
上野:そのためにまず課題整理が必要です。例えばあるブランドの商品が売れていないのであれば、商品自体が良くないのか、セルインに問題があるのか、課題を正しく抽出し、その上でブランドのターゲットを明確にします。若者がテレビを見なくなったり、共働きの世帯が増えたり、また3人に1人が65歳以上という超高齢社会を迎えようとしています。そうした世の中の変化を見据え、リアルなターゲット像としてペルソナを設定することが、ブランドがどうありたいのかを考える上で重要な判断基準になります。
戸田:正しいだけでも機能しないのがリ・ブランディングの難しさです。クリエイティブの視点で、インパクトがあるか、おもしろいか、あえて極端な立場から議論する。さまざまな視点から見ることでクオリティも上がっていくと思います。クリエイティブと聞くと、外側へ向かってコミュニケーションを作るイメージがありますが、むしろ内側へ向かわなくてはならない。ブランドの内側に潜む本質をつかみ、その本質的な力を解放する。そのベクトルが正確か、世の中に対してインパクトがあるか、クライアントと共生できるか。極めてロジカルに思考を積み重ねていくため、ストラテジックプランニングとクリエイティブの連携が非常に重要です。
上野:「What to SAY(どう言うか)」だけでなく「What to ACT(どう動くか)」が伴わないとコミュニケーションは機能しないし、企業全体としてもよくなっていかない。エンドユーザーとの関係性も、一方的にではなく、企業の活動に賛同してもらうことでキャッチボールが始まる。ブランドの本質は何か、まずコアを決め、その上で全体を包括的に考えていく。リ・ブランディングをうまく進めていくためには、企業全体の活動をつなげ、動かしていく必要があります。
戸田:さらに、長期的に強いブランドへと成長させていくために、YRK&独自のデータドリブンの手法を用い、効果測定や計測で得られたデータを元に、次のアクションへとつなげています。成果を数値として「見える化」でき、ごまかしがきかないので、きちんと機能するようにロジカルにコミュニケーションを設計していかないといけない。
上野:その一方で、次に何をやるべきか、改善点も「見える化」できるので、積み上げ式でブランドを強くしていける実感はあります。中心となるブランドや商品が売れるだけでなく、全体への波及効果で、クライアントのその他のブランドの力も底上げできます。自社のブランドはたいしたことないと謙遜されるクライアントも多いですが、そんなことはありません。自社のブランドや商品にもっと誇りを持っていただき、世界とも戦っていけるよう、インナー・アウターのリ・ブランディングに総合的に取り組んでいくことが私たちの課題です。
戸田:クライアントが自らアクセルを踏み、加速しながらどんどん新たなビジネスを展開していく、その成長の一助になれるよう継続的にお手伝いしていきたい。日本企業の良いところは残しながら、新たな時代に対応できる体質へと改善していく。それは社会的にも非常に意義があることではないかと考えています。
東阪事業戦略室
シニア・クリエイティブディレクター
広告会社にてデザイナー、アートディレクターとして活動し、主に大手飲料・食品メーカー、通信会社、アパレルメーカーなどを担当。2009年、株式会社 YRK and入社。コミュニケーションデザインユニット(CDU)の統括クリエイティブディレクター・コミュニケーションデザイナーとして活動。メーカーのブランドデザインを得意とし、広告領域だけではなく、プロダクトデザイン、ストアデザインも含めたトータル的なコミュニケーション構築を行う。2017年からは、経年劣化してしまったブランド力の再生を専門的に担うリブランド・コンサルティング(RBC)事業や、メディアニュートラルを前提とした従来の広告計画に縛られないコンパクトコミュニケーション®デザイン(CCD)メソッドを推進。YRK&のストラテジック、クリエイティブ、インタラクティブ、メディアデザイン、プロデュース、BPOの6つの部門を統合することであらゆる業態のビジネスそのものを、コミュニケーション領域からサポート。内的な体質改善から外的要因を体系的且つ継続的にコントロールすることで、愛されるブランドへ導くコミュニケーション活動を行う。
クリエイティブコンサルティング事業部(CRC)
シニアマネージャー
コンサルタント 兼ストラテジックプランナー
株式会社 YRK andクリエイティブコンサルティング事業部(CRC)のコンサルタント兼、ストラテジックプランナーとして活動。TMOTプラットフォームカンパニーという愛用者に着目した独自のマーケティングメソッドを軸とした社内ベンチャー・独自サービスの立ち上げを牽引。現在はリブランドコンサルティング(RBC)事業を推進し、クライアントのコミュニケーションコンサルティングを担い、あらゆる症状や機能低下を発見することで新たな戦略策定を行い、特別なノウハウによるワークショップやブレインキャンプなどの共生型ワークスキームを活かしたインターナルブランディングを得意とする。またクリエイティブチームとの連携によるエクスターナルブランディングをバランスよく稼働させ、本質的な課題解決をアウトプットまで一貫して行う事ができる。効果測定が重視される中、データドリブンマーケティングも同時推進することで、短期的なコンサルティングだけではなく、長期的な取り組みの中で現在多くのクライアントのコンサルティング担当。