2024.12.10
企業が長期的に成功を収めるためには、組織全体の共通目標や価値観を明確にすることが不可欠です。この共通基盤を提供するのがMVV「Mission(ミッション)Vision(ビジョン)Value(バリュー)」です。MVVの策定は、従業員の行動指針や企業の方向性を明確にし、企業全体の一体感を強化します。さらに、MVVは企業の社会的責任や持続可能な発展にも寄与し、ブランド価値を高める要素となります。
本コラムでは、MVV「Mission(ミッション)Vision(ビジョン)Value(バリュー)」の重要性、MVVの構成要素、MVVの浸透に成功し事業を成長させた企業事例、さらにはMVVを浸透させる方法について詳しく解説します。
Index
MVVとは「Mission(ミッション)」「Vision(ビジョン)」「Value(バリュー)」の略称総称です。企業の経営方針、目指すべき姿、行動原則を示す重要な要素であり、企業活動において組織力を最大化させるために欠かせない重要なものです。
以下では、「Mission(ミッション)」「Vision(ビジョン)」「Value(バリュー)」の言葉の意味や策定の目的を解説していきます。
「Mission(ミッション)」は企業の根本的な使命や存在意義を示し、社会や顧客に対して何を提供するかを明確にします。企業が長期的に持続可能な価値を提供するために、ミッションは常にブレない基盤となります。
「Vision(ビジョン)」は、企業が未来に向かって目指す理想的な状態を示します。これは、企業がどのような存在になりたいかを示すものであり、従業員やステークホルダーに対してモチベーションを提供します。
「Value(バリュー)」は、企業内で共有される価値観や行動指針を定義します。バリューは従業員の日々の行動を導き、企業文化の形成に大きく影響を与えます。
MVV「Mission(ミッション)」「Vision(ビジョン)」「Value(バリュー)」は、企業理念や経営理念、行動指針と密接に関連していますが、異なる役割を持っています。企業理念は「企業全体の長期的な目標や価値観」を示し、経営理念は「経営者の価値観や経営方針」を具体的に示します。一方でMVVは、企業の存在意義(ミッション)、目指す将来像(ビジョン)、その実現のための行動指針(バリュー)を明確にし、日々の実行に落とし込みやすくするものです。
企業理念の詳細コラムはこちら:https://www.yrk.co.jp/media/corporate-philosophy/
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の策定は、企業規模・成長局面・業績進捗・組織風土など、様々な側面を考慮した上で構築するため、ミッション・ビジョン・バリュー3つ全てが必ず必要な訳ではありません。ここでは代表的な策定の型を紹介します。
この型では、ミッションを基盤にビジョンとバリューが設定されます。投資家やステークホルダーを意識して社会的使命を明確にし、企業が社会にどう貢献するかが中心となります。
ビジョンを中心に据え、その実現に向けたミッションと行動規範(バリュー)を定める型です。特に革新的な企業や新興企業に適しています。
ミッションとバリューに焦点を当て、企業が成すべきこととそのための行動指針を具体的に示します。
ビジョンとバリューに特化し、将来の目標を達成するために、従業員がどのように行動すべきかを強調する型です。
「突っ張り棒」で有名な平安伸銅工業株式会社は、1952年に大阪市十三で銅加工を行う町工場として創業しました。創業以来、「アイデアと技術で暮らしを豊かにする」という一貫したビジョンを掲げ、時代の課題に応えるアイデアと技術革新で成長を続けてきました。この創業からのビジョンは、代を重ねても変わらず受け継がれ、現在の企業ミッションやビジョンに結実しています。
MIC株式会社は、2022年まで「水上印刷株式会社」という社名で印刷業を行っていましたが、社名変更後、「時間」という貴重な価値にフォーカスし、印刷業の企業から「時間創造」や「PL改善」のためのBtoB企業の業務改善をデジタルとフィジカルで支援する企業へと事業変革を遂げました。この新たな事業体制とミッション・ビジョン・バリューの一貫性を持つことで、まさに斜陽産業からの脱却に成功しました。
「BOTANIST」や「SALONIA」といったヘアケア、美容家電を手掛ける株式会社 I-neは、“幸せの連鎖”を生むためのブランドを生み出す企業として成長し続けてきました。コアな事業に集中するために、ファブレスメーカーとして商品・ブランドづくりに特化したビジネスモデルを構築しています。代表の過去の経験や想いがミッション・バリュー・クレドに落とし込まれており、全社員が代表と同じ視座で事業づくりに取り組むことができる組織づくりに成功しています。
株式会社マネーフォワードは、金融知識の不足が人々の人生に与える影響を憂慮し、より良い人生を実現するための支援を行っている企業です。ユーザーが「お金」という側面での悩みや問題から解放され、より多くの時間を充実した豊かな人生の実現のため使えるように、また日本の未来を担う一人ひとりの挑戦を支援することで、社会全体の「自信」回復に貢献し「素晴らしい日本」を次世代に残すことも目標としています。企業が大切にしている価値観が事業やミッション・ビジョン・バリューに直結している成功事例です。
企業が持続的な成長を遂げるために、明確なMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の策定は不可欠です。しかし、単に理念を定めるだけでは不十分であり、効果的に浸透させるためには、適切な策定プロセスが重要です。以下は、MVVを策定する際に押さえるべきポイントです。
MVV策定は、まず企業が抱く夢や志を語るところから始めます。事業環境の整理や現状分析にとらわれすぎるのではなく、企業の根本的な目標やビジョンを見据え、その思いを明確に表現することが重要です。「魂なき経営理念に力なし」という言葉が示すように、情熱と信念を持って策定することが企業理念を力強いものにします。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の策定はトップダウンだけでなく、社内全体を巻き込むプロセスが大切です。特に、幹部層・マネジメント層を集めて議論を重ね、彼らを通じて社内浸透のハブを形成することで、従業員全体に理念を共有しやすくなります。
正しい表現にこだわりすぎると、社員に伝わりにくくなることがあります。そのため、社内で使いやすく、覚えやすい言葉を選定することが大切です。特に「ワクワクできる合言葉」を作ることが、理念の浸透に大きな効果をもたらします。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を単に言葉(テキスト)で表現するだけでは意図が伝わりづらいことがあります。そこで、画像や具体的なビジュアルイメージを合わせて共有することで、社員の理解が深まり、視覚的にも理念が定着しやすくなります。視覚と言葉(テキスト)を組み合わせたアプローチが効果的です。
「言葉」の選定における詳細こちらをご覧ください。↓
企業が策定するMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の中で、特に重要なのが言葉の選定です。適切なワードは、企業の理念を明確にし、社員やステークホルダーの共感を得るための基盤となります。以下のポイントを押さえることで、効果的なMVVワードを選定することができます。
MVVの言葉は、シンプルで分かりやすく、力強いものであるべきです。文章が長すぎると社員への浸透が難しくなるため、3〜5項目に絞ることが推奨されます。短いながらも企業の本質を的確に表現することが重要です。
抽象的な言葉や広義的な表現は避け、具体的で明確な用語を使用することが求められます。例えば「豊か」「柔軟に」「あらゆる」といった言葉は解釈が曖昧になりがちなので避けるべきです。その代わり、言葉の範囲や意味が明確で、具体的な行動を連想させるワードを選ぶとよいでしょう。
MVVのワード選定においては、自社のメンバーが納得し、共感できるかどうかが最も重要です。ワードは単なるスローガンではなく、社員の日常の行動指針となるものであり、全員が一貫して理解できるものである必要があります。
目指す社会像を描く「三人称の視点」と、自社の事業ポジションを明確にする「一人称の視点」のどちらに重点を置くかを決めることが大切です。特に一人称視点の場合は、達成時期や目標を明確に設定し、社員に具体的な目標を示すことでモチベーションを高めます。
ビジョンは社員に納得感や親しみを持たせ、期待感を抱かせるものでなければなりません。社員が自らの役割を認識し、企業の未来に貢献する姿を思い描けるような言葉を選びましょう。
このように、MVVのワード選定は企業文化の基盤を形成する重要なステップです。具体性とシンプルさを重視し、社員が共感しやすい言葉を選ぶことで、企業全体に浸透しやすい強力なMVVを策定することができます。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の策定は、半年以内に完了させることが推奨されます。時間が長引くと、当初の熱意が薄れ、プロジェクトがマンネリ化しやすくなるためです。しかし、勢いでその場で決定してしまうと、冷静さや客観性を欠く恐れがあります。ここで言う「熟成」とは、議論とは別日にあらためて冷静な目で見つめ直し、客観性を持ちながら内容をブラッシュアップしていくプロセスを指します。熱量を維持しつつ、冷静な視点で適切なMVVを完成させることが重要です。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の策定プロセスの最終的な判断は、経営者が行うことが不可欠です。最終的なビジョンを決定する際には、独断で決める勇気も必要です。経営者の強いリーダーシップによって、企業全体の方向性が一貫したものになります。
企業において、パーパスやMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を定義することは、社員の意識改革や組織文化の変革を促す重要なステップです。しかし、定義しただけでは組織の変革は実現しません。そこで、MVVを浸透・定着させインナーブランディングを成功させるには、以下の3つのステップをしっかりと理解し、実行に移すことが必要です。
まずは社員一人ひとりの意識を変えることが不可欠です。パーパスやMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)が社員にとって「自分ゴト」として捉えられるように、経営層からマネージャー層、そして一般社員へと考える機会を提供し、理解を促すことが重要です。経営層が明確にビジョンを示し、社員が自らの手で行動に移せるよう、内発的な動機づけを行うことが求められます。
意識改革が進んだ次の段階では、具体的な行動改革が求められます。行動改革は、社員が日々の業務の中で具体的なアクションに落とし込むことを意味します。ここで重要なのは、社員が企業のミッションやビジョンに基づき、実際にどのように行動すべきかを明確にし、その行動を日常業務の中で実践できるような仕組みを整えることです。
例えば「アワード」を開催し、MVVに基づいたアクションを起こしたチームや個人を表彰することも、行動改革の一環となる有効な手段といえます。
最後に、意識と行動の変革が組織や事業全体に定着するような仕組みを作り上げることが必要です。制度や仕組みを通じて、社員の行動習慣をつくりあげることが組織文化の形成に繋がります。これにより、社員一人ひとりの行動が企業全体の目標達成に寄与し、持続可能な成長を実現します。
MVVを効果的に浸透させるためには、単に理念を掲げるだけでなく、日常業務の中で実際に活用される仕組みづくりが求められます。経営層とマネジメント層が中心となり、社員全員が共通の目標に向かって努力できる環境を整えることで、企業全体の一体感が高まり、持続的な成長が実現するのです。また、これにより社員のエンゲージメントも向上し、組織全体の競争力が強化されます。その結果、自律型人材が育成され、変化に強い自走組織を構築することが可能となるわけです。
時代の変化が著しく、働き方の変化や価値観が多様化しているZ世代の在籍比率が高まる中、企業はMVVを見つめ直す重要性は益々高まっています。MVVについて正しく理解した上で、自社のMVVと自社の未来について改めて考えることが、事業を飛躍的に成長させるきっかけになるでしょう。
Writer
ReBRANDING magazine 編集部
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