2020.04.14
未だコロナの収束の兆しが見えない中、外出を自粛する人がますます増え、国内の消費は急激に冷え込んでいます。
先日、ビッグデータの解析・分析から消費活動の“今”を調査する「JCB消費NOW」の速報値が発表され2月後半から3月前半にかけての業種別消費行動の変化が明らかになりました。総合消費指数の「総合」は前年比-7.7%と昨年の増税後の下げ幅(-6.5%)を超えており、また業種別消費指数をマクロでみると、各業種が軒並み大幅に下落しています。特に外食、宿泊、旅行、日用品以外の小売業など不要不急の消費が大幅に悪化しており、巣ごもり対策としての生活必需品以外の購買意欲は低下している現状が見て取れます。
そのような中、特に注目したいのが唯一上昇傾向にあるECです。2月後半5.3%上昇、3月前半4.1%上昇(前年比)と、非接触でダイレクトに買い物ができるECの需要が伸びています。省スペースででき、体力低下を防ぐ運動用品や、人との接触性が低いアウトドア用品、自宅で快適に過ごすための雑貨などが売れており、一時的に「楽天」やアスクルの「LOHACO」など、注文過多による配送遅延まで発生しているようです。
これらの事象を見ると、外出自粛要請に伴い一時閉店をされている店舗も多数ある中、オンラインビジネスの強みと、オフラインビジネスの脆弱性が浮き彫りになったと言えるのではないでしょうか。これからの商流は、ECをはじめとする「
自宅に居ながらワンクリックで簡単に物が買えるECですが、近年、大手マーケットプレイス等との差別化を図るため、単純に商品を販売するだけではなく、サイト自体をメディア化し、生活者の興味に寄り添う情報を発信し続け、顧客のロイヤルティを高める「メディアEC」が注目されるようになっています。
ホームセンターの「カインズ」は、ECサイト内にDIYやプチリフォームのHow toコンテンツを掲載し、商品だけではなく「ライフスタイルを自分で創ること」を訴求することで小売業ならではの提案力を示しています。また、クラシコムが運営する「北欧、暮らしの道具店」は「モノだけではなくライフスタイルを提供」することで独自の世界観を構築し、出版物の発行やオリジナルのドラマまで公開、顧客のファン化を促進する展開を行なっています。また先日、大手アパレルのビームスが初めてライブコマースを展開しました。1時間の配信時間で6000人以上が視聴し、ジャケットの着こなし方などの質問にもリアルタイムで応え100万円程度の売り上げを上げたようです。
このように、従来の売り手と買い手の関係性が変わりつつある中、今世界で最も注目されているのがD2Cというビジネスモデルです。D2Cは、「Direct to Consumer」の略で、消費者に対してダイレクトに商品を販売する仕組みを指しますが、その戦略は従来の伝統的なブランドと大きく異なります。その多くはメーカーを出発点とするものではなく、デジタル領域を起点としたファブレス経営のベンチャーで、コストパフォーマンスに優れた非常に魅力的な商品を提供しています。
しかしながらD2Cブランドがもっとも大切にしていることは商品力を訴求するのではなく、一貫性のある世界観やストーリーを提示し、共感してくれる顧客(=仲間)を獲得、売り手/買い手ではない関係性を築くことでLTVを高め、長期的に収益を向上することです。商品広告を出すことはせず、さまざまな手法でブランドのコンテクストを語ることでファンを増やし、そのファンからの発信で、さらなる良質なリードを獲得しています。
また、国内でもスーツやスキンケア用品、食品やサプリメントまで多くのD2Cブランドが立ち上がり、代表的なブランドは急激な成長を遂げています。これからの消費を支えるミレニアム世代以下の価値観にフィットしコスパが良いことだけでなく、ブランドの世界観への共感を得ることに成功し、ブランドと顧客との素敵な関係を築き上げている証しなのではないでしょうか。
成功しているD2Cブランドの共通項を洗い出すと、
■何のためのブランドかが明確
■販売することではなく、販売後の生活者の暮らしを良くすることが目的
■顧客との継続的な関係性を構築
■人の温かみを感じるコミュニケーションを展開。
などが挙げられます。
このようなブランド展開はD2Cだけではなく、これからのあらゆるブランディング戦略において極めてベーシックなものになっていくのではないでしょうか。
現在、国内の消費者向け商取引におけるEC化率は6.2%で中国の20.4%、米国の11.8%に比べると、まだまだ伸びしろがあるとされています。コロナショックが生活者の消費行動を変え、EC消費を大きく伸ばすきっかけになりました。既存流通との関係性によるECの制限や、既存のEC事業の不振など多くの課題がある中、全く新しいD2Cブランドを少額の初期投資でコンパクトに立ち上げ、スタートしてみるのも新たな成長軸を生むきっかけになるかもしれません。