“カスタマーサクセス”こそ、企業価値を高めるブランディング戦略

2025.03.24

“カスタマーサクセス”こそ、企業価値を高めるブランディング戦略-林column



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事業成長において、CS向上のための顧客体験価値の向上の重要性は日々高まっています。
顧客体験が企業の成長に直結する今、カスタマーサクセスという言葉が注目されています。では、このカスタマーサクセスが、どのようにしてブランディング戦略と結びつくのでしょうか?

本コラムでは、カスタマーサクセスがいかに企業のブランド価値向上に寄与するのか?
長年、コンタクトセンターにおいてカスタマーサクセス支援を手掛けてきたYRK&が、その本質と実践方法について掘り下げていきます。

カスタマーサクセスとは?その基本的な考え方と重要性

カスタマーサクセスとは顧客の成功体験を実現し、継続的な利用を促進することでLTV(顧客生涯価値)を最大化する取り組みを指します。
元々はBtoB市場におけるSaaS(Software as a Service)業界で広まりました。MA、SFAツールといったマーケティング支援サービスや、勤怠管理やクラウド精算といったバックオフィス系のツールなどが該当します。

カスタマーサクセスは単に顧客の問い合わせに対応するだけでなく、顧客が自社の製品やサービスを最大限に活用できるよう支援し、最終的には顧客満足度と忠誠度を高めることを目的としています。重要なのは、顧客が成功することで企業側にも利益がもたらされるという相乗効果です。顧客が製品やサービスを効果的に利用し、問題なく成長することで、顧客からの信頼を獲得し、ブランドへの愛着が生まれます。結果的に顧客のリピート購入や、他の潜在顧客への推薦という形で、企業の売上や評判が向上するのです。

カスタマーサクセスイメージ画像

また、BtoC市場においても近年のサブスクリプション型ビジネスが拡大するに伴い、カスタマーサクセスの考え方は定着化しています。AmazonプライムやNetflixなどを代表とする、サブスクリプションサービスでは、買い切りではなく月額料金でサービスを利用するといった、「利用」に対価を支払うサービスで、皆さんの中でもサービスを契約している方も多いのではないでしょうか。
「利用」に対して対価を支払うこの形態では、新規顧客の獲得も重要ですが、それ以上に、顧客が一度利用したサービスを長く利用し続け、LTVを高めることがビジネスの成長に直結します。
そのため、カスタマーサクセスでは解約率(チャーンレート)が重要な指標となります。顧客が「便利だ」「自分にとって価値がある」「愛着を感じる」「好きだ」と感じることで、長期利用が促されるのです。

「売って終わり」ではなく、継続収益が見込めるストック型ビジネスが経営にとって望ましいのは言うまでもありません。

有名事例から学ぶ、
カスタマーサクセスがブランディング戦略に与える影響(Zappos事例)

カスタマーサクセスは、顧客がサービスや製品を利用しポジティブな体験(成功体験)を得ることで顧客満足度が上がり、ブランドに対する信頼とロイヤルティを高める重要な役割を果たします。
また、カスタマーサクセスは顧客との長期的な関係を築く活動でもあり、これにより一度顧客がブランドを選ぶと、継続的にそのブランドを支持し続けてもらえるようになります。このプロセスは、ブランドロイヤルティの向上をもたらし、顧客維持率を高め、収益の安定化に繋がります。そして、顧客がブランドを支持し続けることは、競合との差別化にも寄与します。

カスタマーサクセスを語る上で欠かせない最も有名な事例は 『ザッポスの奇跡』で知られる、アメリカにある靴のネット販売会社「Zappos(ザッポス)」です。

Zappos(ザッポス)イメージ画像

ザッポスは、オンラインでの靴・アパレル販売企業として、“神対応”とも呼ばれる卓越した顧客サービスを通じて成功を収めています。同社は、顧客に感動を提供する「WOW体験」を重視し、単なる問題解決にとどまらない質の高い対応を行っています。例えば、顧客との会話で10時間以上対応した事例や、特別な顧客に対して無料で配送を翌日便にアップグレードするサプライズ対応が実施されています。

また、ザッポスは365日間の返品保証を提供し、顧客が安心して商品を購入できる環境を整えています。この柔軟な返品ポリシーにより、購入へのハードルを下げ、リピーターの増加を実現しています。

同社の企業文化も特徴的で、「顧客を驚かせ、喜ばせること」を最優先にする価値観を従業員全体に浸透させています。対応件数や対応時間ではなく、顧客との関係構築や問題解決の質を評価基準とし、1件あたりの対応時間に制限を設けないことで、顧客に寄り添った丁寧な対応を行っています。

ザッポスは年間売上10億ドル超を達成し、90%近くの売上をリピーターから獲得するという成果を挙げ、2009年にはアマゾンに約12億ドルで買収されるに至りました。 この買収後も、ザッポスは独自の企業文化と経営方針を維持し続けています。アマゾンとの連携により、返品プロセスの改善など、顧客対応がさらに向上しました。

ザッポスの事例は、顧客を第一に考え、感動を提供することがビジネスの成長に直結することを示しており、単なるEC企業を超えて、顧客体験と企業文化のリーダーとして世界中から注目されています。

このように、カスタマーサクセスは企業のブランド成長を支える重要な要素であり、ブランディング戦略に多大な影響を与える要素となるのです。

コールセンターにおけるカスタマーサポートとの違い

従来、コンタクトセンターやコールセンターにおける「CS」といえば、カスタマーサポートを指していました。
カスタマーサポートとはその名の通り、「顧客の支援」であり、顧客からの問い合わせに対応し、問題を解決することで満足度を向上させる業務です。
一方でカスタマーサクセスは単なる問題解決にとどまらず、能動的なアプローチや提案を通じて顧客の成功を支援し、さらに定期的に満足度や利用状況をチェックし、継続利用やアップセル、クロスセルにつなげることでLTVの最大化を目指します。
そのため、カスタマーサクセスとカスタマーサポートでは、取り組み姿勢、KPI、サービス、KGIが異なります。簡単にまとめると次のようになります。

サポート(支援)からサクセス(成功体験)にカスタマーの成功を共有する。

具体的には、カスタマーサポートとカスタマーサクセスではコンタクトセンターにおいて求められる業務スキルが異なります。カスタマーサポートではクレーム対応やトラブル解決のために優れた傾聴力や判断力、そして忍耐力が求められます。一方でカスタマーサクセスにおいては、もちろん同じ力も必要ですが、さらに顧客に適切なサービスを提案し、より良い利用方法を促す力が重要になります。

このようにカスタマーサクセスは、顧客との長期的な関係を築くことが求められる役割ですので、カスタマーサクセスのチームやセンターは本来企業内に組織化されるのが一般的です。

YRK&のカスタマーサクセス支援

YRK&では、本来企業内に組織化されるべきカスタマーサクセス機能をBPOサービスとして提供できる知識・経験・実績を有しています。その理由をCSセンター開設の背景を含めご説明します。

YRK&はリブランディング支援を専業とする「事業コンサルティングファーム」です。お客様のブランド価値を向上させ、ビジネスを持続可能なものにすることがミッションであり、そのために伴走型のコンサルティングを行っております。
BPO業務を通じて蓄積されたデータを分析し、問題点を発見、コンサルティング部門にエスカレーションし原因の追求・修復・改善を行う。これにより企業活動に一貫性が生まれ、企業ブランドの質が向上します。

YRK&のBPO領域の特長はこの延長線上に「営業力強化」「組織変革」「新規事業創出」「顧客満足度向上」といった経営課題の解決に向けた糸口を掴む点にあります。
YRK&カスタマーサクセスセンターは、この目的を達成するために開設されています。
スタッフはクライアントのビジネスモデルやミッション・ビジョン・バリューを理解し、自らがクライアントと顧客のブランド接点の最前線であることを理解した上で、均一なスクリプト対応ではなく、パーソナライズされた高品質な顧客体験を提供できる能力が必要です。
そのため、一般的なコールセンター業務で求められるSLA(サービス品質保証)、KPI、またスタッフの質とは大きく異なります。
高品質なサービスを提供するにはかなりスタッフを熟練させる必要がありますので、一般的なコンタクトセンターに比べYRK&のCSセンターには経験値の高いオペレーターが在籍しているのが特長です。

カスタマーサクセスを外部発注できない理由は主に、外部の企業や担当者だと、「会社の文化や顧客との信頼関係をしっかりと構築するのが難しい」「企業のブランドや製品に対する深い理解が不足し、ブランドの価値や企業のメッセージを正確に伝えることができない」ことだと言われています。

YRK&ではお客様のブランド価値を向上させるため、徹底的な伴走型のコンサルティングを繰り返してまいりました。その結果、経験、また人材という観点からも、本来企業内に組織化されるカスタマーサクセス機能を、高いレベルでBPOサービスとしてご提供することが可能となっています。

カスタマーサクセスセンターの実践手法

YRK&カスタマーサクセスセンターが提供しているサービスと通常のカスタマーサポートとの違いを表したものが下記になります。

サポート(支援)からサクセス(成功体験)にカスタマーの成功を共有し達成を支援

顧客の目的(サクセス)の達成を支援、また次なる目標の提案と同意を経てその達成を支援するという伴走を続けることでLTV向上につなげます。

カスタマーサクセスセンターの実践手法として例えばHealth&Beautyのメーカーの場合、次のようなことが考えられます。

購入前

顧客が過去に購入した化粧品や健康食品、これまでの問い合わせ内容をもとに、次に必要な製品や最適な使用方法を提案するだけでなく、顧客のライフスタイルや美容の目標を理解し、それに合わせたケア方法や健康に関する知識を提供します。
あくまでも「製品購入」よりも顧客が「結果的に健康で美しいカラダや肌を手に入れる」ことを最優先します。

購入後

「調子はどうですか?どのような変化がありましたか?」など定期的に進捗をチェックし、カラダや肌の状態や新たな悩みについて確認します。
そして顧客の美容・健康の状態や目標に応じたフィードバックを行い、必要に応じて製品やサービスを調整
します。また、顧客が自分で正しいケア方法を理解し、長期的に自信を持って行えるよう、教育的なコンテンツを提供します。
さらには季節ごとに必要な美容ケアを提案したり、新しいヘルスケアトレンドに基づいたサポートを提供します。

ユーザーへの購入前後のサービスの違い

このようなプロセスを経ることで、顧客は単に「製品を購入した」という経験だけでなく、「自分のカラダや肌が健康で美しくなった」と実感することができ、企業やブランドへの信頼とロイヤルティが深まります。

このように顧客との関係が「製品購入の取引」ではなく、「目標達成のパートナー」になることで、顧客はより価値を実感し、製品購入以上の満足感を得ることができ、結果的に長期的に製品やサービスを利用し続ける意欲が高まり、LTV向上につながるのです。

最後に
カスタマーサクセスは、企業のブランド価値向上に不可欠な要素であり、成長を支える戦略的な要素です。顧客との長期的な信頼関係を築き、成功を支援することで、ブランドのロイヤルティが強化され、最終的にLTV(顧客生涯価値)の最大化に繋がります。
顧客との関係を深め、共に成功体験を創り出すことで、持続可能な収益基盤を構築し、ブランドの競争力を高めることが可能となります。

YRK&では、各企業の状況に応じたカスタマーサクセス戦略を策定し、実行支援を行います。これにより、企業のブランド価値を高め、顧客からの信頼を得ることができます。私たちの支援を通じて、顧客体験をさらに向上させ、企業の成長を後押しします。


株式会社YRK and
ING事業部 Brand Customer Success Center 責任者
林 寛力
Writer

株式会社YRK and
ING事業部 Brand Customer Success Center 責任者
林 寛力

2006年 株式会社 YRK and(旧 株式会社ヤラカス舘)入社。
長年プロデューサーとして、クライアントの業績向上を目的とした、多岐に渡る業務に従事。
2020年より現職。様々な業種のマーケティング業務携わった経験を活かし、幅広い視点でCSセンターの課題発見~解決に取り組む。伴走型のセンター運営を推進する。