2019.12.10
「全てのビジネスは、一度お金に変換している活動」という捉え方
最近、ある経営者の方々と面白い会話をしました。それは他でもない、「お金」の話。中でも、ビジネスにおけるマネタイズのことを「お金に変換する活動」と定義した面白い話でした。彼らは、「いちいちビジネスの途中段階で、価値をお金に変換することをどう考えるか?」という文脈で色々なことを語ってくださいました。
話を噛み砕いてみると
たとえば、ある良質なリンゴがあるとします。その価値を売り手は100円とつけました。それを事業主が販売し100個を売る。すると1万円を手にする事ができる。そこで、次はそのお金を活用して今度はブドウを仕入れ、新しくPRを行い、応用して販売する。次は200円で200個。300円で300個といった具合。それを繰り返すことで、品揃えを増やし、売上を拡大。さらなる事業拡張を行うことができる
少し直線的で極端な一例ですが、お金を介在させて事業を拡大させることでビジネスを拡張させる典型的なもの。形は違えど、私たちのビジネスも、超単純化すればそうかもしれません。これらを冒頭の文脈に変えると、いずれも「販売する」という活動を介在させることで、早いタイミングで金銭に「変換」を行い、価値を明確化してから次のステップ(仕入れ)へ行くと捉えられます。「リンゴ」「お金」「ブドウ」「お金」「バナナ」「お金」という具合に、拡大ごとにお金へ変換します。
お金に変換することによる手間
しかし、ここには変換の度に「色々な手間」が発生してしまっている。一度現金化し、「ブドウ」を買う際にも、人の手間や、金融機関を介せば手数料も発生し、そのためのレジや金庫などの設備や管理も必要となる。結果、この「お金への変換」を繰り返すことにより、意外とそのコストが膨らむのです。言い換えれば、日頃当たり前だと思っている仕事の仕組みや、習慣そのものへの指摘でもあります。彼ら曰く、これにどこまで「お金への変換」というものを介在させず拡大できるのか。もしそれが可能なのであれば、もっとスピード感を持って、効率よく、ムダも少なく、一気に拡大できる可能性があるのではないか。世界で注目されている新しいビジネスモデルのヒントも、そこに共通するものがあるのではないか。と、話は広がっていきました。
ではどうするか?
では、「お金への変換」のタイミングを変えるとどうなるのか。たとえば、良質なリンゴがあり、それを知ってもらい、理解してもらう。その時点で購入してお金に変えるのではなく、その商品をまずは配る。つまり「お金への変換」をしない。価値を配ります。その結果、このお店にファンが増え、また繰り返しリンゴをもらいにお客様は訪れます。そこにブドウを置き、バナナを置くと、当然さらにお客が増える。すると、そこには、「果物が大好きなお客様がたくさん集まる場所」という新しい価値が生まれる。次にその果物好きが集まるコミュニティーに新しい様々なサービスや商品が集まってくる。事業主は、この時点でいったん「お金への変換」をすることもできるが、この可能性を追求していけば、またさらにイノベーションが起こる可能性が出てくる。よく書籍などでも耳にする「PL経営の限界」なども、似たようなニュアンスがある。これが彼らの言う、「いちいちビジネスの途中段階で、価値をお金に変換することをどう考えるか?」ということなのでしょう。
この話からは、習慣化してしまっている「早い段階でのマネタイズ」を問題視している点に共感しました。言い方を変えると「キャッシュポイント」との距離感をどう考えるか。このコラムでは「お金になるまでの距離」と書いています。私たちは、普段の仕事の習慣から、「お金(売上)」として結果が早く見えてくることに絶対的な安心感を持ちます。この点も、早い段階でマネタイズしてしまう心理的な要因でもあるのかもしれません。いつものビジネスの延長線上で考えてしまう習慣が、イノベーションを阻害していることも多いのではないでしょうか。お金との距離感からそんなことを改めて考えさせられました
可能性を育てる活動
そういう意味においては、私たちが取り組んでいる「リブランドコンサルティング事業」も、PLを追求するビジネスモデルと相性の良い活動とは言えません。コミュニケーションを「コスト(支出)」と捉える経営者にとっては、受け入れにくい活動。しかし、コミュニケーションを「インベスト(投資)」と捉える経営者にとっては、売上向上だけではなく、事業や組織などの様々な可能性を伸ばすものであると捉えてもらえます。実際にリブランディング活動は、直線的に「商品をよく見せて売る」ということにとどまらず、価値の再定義から新しい事業を生み出せたり、ビジネスモデルの転換、またリクルーティングや、社員のモチベーション向上にまで、様々な事業活動に派生させることができます。
今回は「お金への変換」を取り上げて話をしてきましたが、私たちは連続的に成長してきた日々のビジネス活動についてあまり疑うことをしません。毎日当たり前の活動として取り入れてしまっていることがとても多い。しかし、もはや連続的な成長に限界が訪れている今だからこそ、全てのビジネス活動の本質を見直し、常識を疑い、柔軟に取り組む必要があるのかもしれません。ぜひ、明日の朝礼から見つめ直してみてください。