コロナショックから生まれてくる、企業の「結束力」を、未来に活かせるか

2020.03.18

#コロナショックから生まれてくる、企業の「結束力」を、未来に活かせるか


「コロナが明ければ、モノが売れる」というのは“幻想”

オリンピックの延期も決まり、コロナ感染は未だ収束の兆しが見えない状況で、企業の活動に大きく制限がかかり出して約1ヶ月。いよいよ業績そのものへのマイナス影響も見えてきました。

悪化した業績を改善するために、コロナ明けに向けて色々と施策をお考えの企業も多いと考えられ、各社工夫を凝らしたセールスプロモーションも一気に動き出すと推測されますが、果たしてコロナが収束したからと言って企業と同じくダメージを受けている家計の財布の紐が緩むでしょうか?見方によっては、予防的に今後も人混みを避けるようになったり、節約意識が高まるなど、コロナ以前よりも生活者の購買意欲は低下することさえ考えられ、コロナが明ければ、モノが売れるようになるというのは幻想といえます。

一方でこの危機を敢えてポジティブに捉えるのであれば、企業における働き方や仕事の在り方そのものを見つめ直せたということです。これまで当たり前に行っていたことも、こうした機会に手法を変え、制度を変えることで、結果として予期せぬ効率化につながったという話も多く耳にします。つまり、この危機で得た学びや経験は、これからのチャンスや成長につなげられるということです。

人並み

ピンチはチャンス!何をチャンスと捉えられるかが鍵

リーマンショックや震災、それ以外にも業界再編やディスラプターの台頭など、企業は様々なことが引き金となり、思いもよらぬ危機にさらされます。そうした危機での経験をチャンスと捉えて、大きな戦略転換を行い、成功や成長を遂げた企業や商品もあります。一体それらの共通項は何でしょうか?

ここで最近、大きく戦略を切り替えた事例をご紹介します。
チョコレートをおやつという概念から大人の嗜好品へ再定義した明治の「The Chocolate」。大ヒットを記録してきましたが、次第に売上が下降傾向になったため昨年末SKUを半分近く減らしました。一度掴んだ生活者をつなぎとめるために、限定商品など話題性のある商品を増やした結果、生活者が選びきれない事態や価格に見合った希少価値を失ってしまう結果に陥っていたようです。

そこで、商品の本質的な価値である「産地ごとに違うカカオの個性を表現する」ことに立ち返り、シンプルで強いブランドに磨き直すとともに、絞り込みによるコスト削減を実現するための戦略に舵を切られました。従来のまま、いつものプロモーションを一部門で行なっていたなら、決してこの様なアクションは生まれなかったでしょう。

チョコ
また、近年のインバウンド需要と株高による消費に後押しされてきた全国百貨店は、コロナの悪影響を受け、前年比40%減という過去最高の落ち込みとなる可能性が示唆されています。(出典:内閣府ホームページ掲載)
しかしながら従来のリアル店舗だけでなく、いち早くECやD2C事業を視野に入れながらオンラインとオフラインを融合させるOMOを推進してきた百貨店だけが、実は成長曲線を描いています。
百貨店の本質的な提供価値である「買い物というワクワクする体験、新しい発見があるドキドキ感」をリアル・デジタルの垣根なくしっかりと磨きあげた結果だと思います。これも同様にEC部門、店舗部門がお互いの目標達成だけを追い続けて得られる成功ではありません。

これらの事例を見ておわかりのように、成功の共通項は“従来の組織の壁を超えた取り組み”で、表層的な手法ではなく、根本にある戦略というレイヤーから転換を図ったことで、一つの部門ではとてもできない大きなインパクトを市場に与えているということです。

結束力が高まる今こそ、組織の壁を超えるチャンス

コロナという大きな危機に対して、組織を超えて一丸となって乗り越えようとしている今こそ、これまでの働き方や仕事の在り方をリセットできたように、組織の在り方を見直す良い機会です。縦割り組織の多くの企業では、タコつぼ化やセクショナリズムにより、部門ごとに単一的な視点で物事を考えるため、戦略が自部門の範疇を超えると効力が弱まり、ブレてしまうというケースもよく耳にします。

こうした課題に対して、部門を横断した共創体制を構築し、普段見えていなかった自分たちの強みや課題を洗い出し、散在している価値を紡ぐことで、ブレない実行力のある戦略の構築が可能となります。売上獲得を狙った表層的な手法の見直しにとどまらず、戦略立案のプロセスそのものを見つめ直すことは、よりイノベーティブな仕事が求められている将来の組織の成長につながるものになるはずです。

具体的に、まずは普段は別々の部門に所属するメンバーを巻き込んで、プロジェクトを立ち上げ、そこでの議論によって、

■徹底的に整理して提供価値を明確にし、捨てるものを決める。
■ターゲットの再設定や具体化を行う。
■戦略ストーリーづくりと共にメンバー全員の気持ちづくり(意思統一)を行う。
■議論した内容を具体的なツールや施策にまで落とし込む

など、単一部門ではできない複眼的な視点で、自社や商品ブランドの原点に立ち返ることができます。こうした議論を経て作られる戦略は、関係者すべての行動の礎となり、営業活動においての“貫通力”が生まれます。またそれだけにとどまらず、部門ごとに作成していたツールや施策の重複もなくなり、コスト面での効率改善が図れることも大きなメリットといえます。

YRK&メソッドの図

生活者とのコミュニケーションにおいては、このコロナショックは逆風の期間ですが、これを逆手にうまく利用して、今のうちに本質的な価値を明確にし、ブレないための判断基準を作っておくことで、貫通力のある戦略と一貫性のある営業活動がコロナショック明けにスタートできる状態を築いておくことが得策です。業績改善に向けた最短のアクションを生み出すだけでなく、これからの成長につながる組織の在り方そのものを変える取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。

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株式会社 YRK and
ブランドクリエイティブユニット(BCU)
クリエイティブディレクター
村川 晃一郎 Murakawa Kouichirou
Writer

株式会社 YRK and
ブランドクリエイティブユニット(BCU)
クリエイティブディレクター
村川 晃一郎 Murakawa Kouichirou

ブランドクリエイティブユニット(BCU)のクリエイティブディレクターとして活動。製品やサービス・企業のリブランディングからブランドプロモーションまでトータル的にクリエイティブワークを行います。ブランドの過去と未来へまなざしを向け、理論と直感のバランスを大切に、一貫性のあるブランド構築を支援します。また従来の手法に縛られない新しい領域への挑戦や、独自のネットワークによるコラボレーションなども積極的に行うことで、インパクトのあるオープンイノベーション環境をつくり出します。