インテリア業界「LOWYA」の計算し尽されたCX(顧客体験)とブランド構築

2022.07.04

LOWYA_コラム_TOPバナーimage(リブランディングマガジン)(事業変革)


株式会社ベガコーポレーションが運営する、家具のD2Cブランド「LOWYA(ロウヤ)」をご存じでしょうか?トレンドを抑えたデザイン性の高い家具が、手ごろな価格で販売されているD2Cブランドです。私は1人暮らしを始める時にLOWYAと出会い、テレビ台を購入しました。

今思えば、出会いから購入にいたるまで、まさに私のために用意されたブランドのように思い、きっとまた家具を購入する機会があれば、真っ先にLOWYAへ探しに行くと思います。

今回は本コラムのライターである私自身をペルソナ化させ、購買行動から逆算する事で見えてくる、LOWYAの計算し尽されたCXとブランド構築について紐解いていきたいと思います。

Index

  1. LOWYAブランドのペルソナを私自身で仮説設計
  2. LOWYAとの出会い(カスタマージャーニー)
  3. LOWYAのECサイトのこだわり
  4. LOWYAのブランド戦略
  5. 最後に

LOWYAブランドのペルソナを私自身で仮説設計

LOWYA_わたしの基本情報・インテリアの好み(リブランディングマガジン)(事業変革)

●わたしの基本情報
30代半ばの独身女性で会社勤務。一昨年転勤が決まり、初の1人暮らしをすることに。引越し先の賃貸マンションは1Kの洋室7畳程度。

●インテリアの好み
目指すは塩系インテリアで無機質なインダストリアル(男性っぽくはしたくない)。出来る限り生活感、圧迫感を出したくないのでティッシュケースやゴミ箱は隠したい。家具のお値段は50,000円程度なら検討範囲だが安く済むのならベスト。それ以上は基本除外。利便性もデザインも重視した、自分で納得できる家具を持ちたい。

LOWYA_接触メディア(リブランディングマガジン)(事業変革)

●普段の接触メディア
Twitter、Instagram、YouTubeがメイン。特にInstagramは、インテリア(隠す・浮かせる収納)や、キッチンアイテム選びの参考にしている。雑誌は楽天マガジンを登録。月に1回ざっとファッション誌・ライフスタイル誌に目を通す程度。テレビはほぼ見ない。話題になった番組があれば後日TVer視聴。ネットでの買い物は消耗品中心。服や家具などは、写真と実物との差異が不安で購入経験ゼロ。

こんなところが私のペルソナ情報になります。
(あくまでもこれは私自身なので、LOWYAさんが考えたペルソナではないので、ご注意を・・・。)

さて、ここからは私がどんな経緯で?何が欲しくて?どうやってLOWYAと出会ったのか?を振り返ってみたいと思います。

LOWYAとの出会い(カスタマージャーニー)

実家では部屋に小さいテレビしかなく、ゲームやYou Tubeなどが見づらかったことから、一人暮らしを始めるにあたり、テレビは大きめサイズの42型を購入しました。そこでまず初めに欲しかった家具としては、これを載せる「テレビ台」をネットで探すことになります。

LOWYA_「テレビ台」購入における、わたしの条件(リブランディングマガジン)(事業変革)

●「テレビ台」購入における、わたしの条件
・目指したい部屋のテイストに合うもの
・部屋が狭いので、圧迫感を感じさせないロータイプ
・テレビのサイズに対して適切なテレビ台のサイズをリサーチ。横120~150cm程度が合いそう
・生活感を隠せる部屋にしたく、外付けHHDや複数のゲーム機を収納したい

LOWYA_ネットの検索方法(リブランディングマガジン)(事業変革)

●ネットの検索方法
・Googleでキーワード検索(“テレビ台 幅120cm”とか)
・Amazon、楽天モールといったECモールで検索
・ニトリ、無印、イケアのブランドサイト内で検索
・Instagramで検索

これらの検索で有力候補として出てきたのが、LOWYAのテレビ台でした。ちなみにLOWYAは、ブラウザでの検索とアマゾン、楽天、Instagramでも登場していたので、ネットで家具を検索する方は、高確率で接触すると思います。

LOWYAのECサイトのこだわり

購入にあたって、決め手になったのは、以下2点でした。

プロダクトの良さ(デザイン性と収納性の融合)

何と言ってもデザイン性が高い。普段良く目に付く家具なので、飽きのこないデザイン、コンサバではあるが無難すぎない、いい塩梅で塩系インテリアに寄ったものでした。また、複数のゲーム機が収納できてデザインも良いものは、LOWYAにしかなかった記憶があります。(HPには、“ゲーム機も収納できる”と記載があったので、隠すこと前提で設計されているよう)

ECサイトの充実度

1つの商品ページにある商品紹介の情報の充実度は、他のインテリアサイトのそれとは全く別物です。私が素晴らしい!と感じたポイントを幾つか紹介します。

●商品のこだわりを写真とテキストで徹底的に訴求
ただ写真を並べているのでなく、こだわって設計された箇所を写真付きで解説、紹介しています。「隠し引手」や放熱対策。電源タップ収納位置や、全ての収納の内寸を丁寧に掲載。コードスリットの位置と、スリットがどう効果を発揮するか、といった細部までも紹介するこだわりよう。私がテレビ台を探してる時の様々なECサイトの中でもこの情報量はダントツでした

●設置イメージが沸く写真類
購入者の自宅で設置されている写真や、各テレビサイズ別の設置バランスイメージが分かる写真の掲載で、自分の部屋にどう馴染むかを想起させてくれました。

●購入者の口コミ
「〇型のテレビを置いたけど、ちょうどいい」「色みは写真通り!」「実物を見ずに初めて購入したけどよかった!」といった購入者のレビューと5つ星評価で、しっかりと口コミが掲載されています。レビュー投稿すると、ポイント還元があるようで購入者メリットもきちんとありますし、LOWYAからすれば未購入者への不安を払拭させる一因になる可能性もあるので、きちんと仕組み化されているのは流石ですね。

●試し置きAR
「3Dモデルで自分の部屋に家具を試し置きできる機能があります。私も実際に購入前に試して、これで部屋に馴染むと安心しました。

私が実際に購入したLOWYAのテレビ台はこちらです。
https://www.low-ya.com/goods/F301_TO003

家具は実物を見て買う前提だった私も、すっかり(LOWYAの思惑通りに?)不安要素は解消され、購入に至りました。

LOWYAのブランド戦略

恐らく、私と同じように「オンライン完結型の家具購入はLOWYAが初めて」といったLOWYAユーザーは多いのではないでしょうか?ネット検索からLOWYAのサイトに辿り着く導線づくりはもちろん、オンラインでのインテリアを購入するにあたっての不安をとことん追求し、徹底的に払拭するための情報が商品ページに整理して詰め込まれているように思います。

更に、オンラインで購入する層が、どんなニーズを持っているのか(どんなテイストの部屋にしたいと思っているのか、どんなサイズのテレビで、テレビを使ってどんな過ごし方をしているのか)といったことも考えた上で商品作りもされているように感じます。

このような体験を振り返り、LOWYA側の仕掛けた工夫についてもう一歩踏み込んでみたいと思います。

調べてみると・・・

・2000年後半からのECモールへの新規参入企業の増加&価格競争。
・2017年頃からの物流クライシスによる送料を含む物流コスト上昇を予測。

これらの外的要因から、LOWYAは売上が増加しても利益が圧迫されることを見越し、理想的な販売価格で商品を購入いただくため、ブランド構築に着手されました

その取り組みの一環としてLOWYAが行ったことは、販売価格や商品構成などの見直し。SEO・Web広告からの新規アクセス流入及びSNS強化による認知度向上。今後の事業規模拡大を見越したLOWYA旗艦店ECシステムのフルリニューアル。特に「他社との売り方の差別化」については強く意識されてるようです。

“「家具単体での差別化は難しい。例えば椅子なら4本脚と背もたれがあるという構造になる。そのため商品で徹底的に差別化するというよりも、提供する空間で差別化していく」(ベガコーポレーション執行役員マーケティング統括部統括部長の京谷謙吾氏)

出典:家具D2CのLOWYAが月商7億円突破 新型コロナの影響も | 日経クロストレンド

私もそうでしたが、消費者が家具を買う際は「こんな家具が欲しい」という以前に、「◯◯なテイストのインテリアで暮らしたい」というマインドが前提にあります。よって上記の「提供する空間で差別化」というLOWYAの戦略は、私自身とても共感し、購入に至った自分の経緯に納得がいきました。

LOWYA_提供する空間で差別化(リブランディングマガジン)(事業変革)

家具単体でなく空間コーデの写真がサイト内に沢山あり、私もテレビ台を見に来たつもりが、素敵な空間コーデがどんな家具で構成されているのかが気になり、まるでウインドウショッピングのようにワクワクしながらサイト内を回遊していた記憶があります。

また、Instagramも運営されており、新商品の紹介はもちろん、インスタライブでは「こんなテイストの部屋にするために、何がポイントになるか」といったアドバイスや、写真だけだと分かりづらい家具の実用性の説明があったり、SNSを積極的に活用し情報発信もこまめにされています。

最後に

今の時代、あらゆる物が過剰供給で安く手に入れることができ、差別優位性をつけることが難しくなっています。
そんな状況下でLOWYAが行った戦略は様々あると思いますが、LOWYAのテレビ台を購入し私自身の顧客体験(CX)を紐解くと、「自分好みのオシャレなインテリアで暮らしたい」という欲求を真摯に受け止めてくれるブランドだということが解ってきました。また、その受け止め方がプロダクトだけでなく、ECサイトの随所に散りばめられています。

今回この体験を通じて私は「また家具を買う時は、LOWYAで探そう」と思わせてくれたことは、顧客体験(CX)としての価値が高かったことと同意であり、それはリピーターをも生み出すことに成功していることになります。すなわち、顧客LTVを上げることにも寄与しており、結果としてLOWYAのブランディングに繋がっていると、学びにもなった買い物体験でした。

writer
坂野まりえ

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