2022.07.07
なんで?なんで?なんで?、子供から、なんで?の連続パンチを時々浴びせられるのですが、2回3回は答えられても、4回5回となると答えに窮してしまい『父さんもわからーん!』となってしまいます。全くの門外漢ですが、この【なんで?】が人間の内面に向けば哲学、自然現象に向けば物理学…といった具合に、全ての学問(事象を体系的に理解する)の礎となっている気がします。では、この【なんで?】が、自身が所属する会社や、販売するブランドに向けられた時、さて、みなさんは答えられるでしょうか。
『このブランドって、何のためにあるんだっけ?』
子供の質問のような、根本的で本質的でとてもシンプルな、あるいは残酷?とも言えるこの問いかけに、「中の人たち」は共有した答えをビシッと胸を張って言えるでしょうか?テスラの事例から、このことについて考えてみたいと思います。
ここで詳しく語る必要がないくらい有名な、イーロン・マスク氏率いる世界販売台数ナンバーワン(2021年)のEVメーカーのテスラ。ブランドミッションは、世界の持続可能なエネルギーへの移行を加速させること。
です。EVの普及が本当に持続可能な社会の実現に資するか、は一旦置くとして、少なくともイーロン・マスク氏はそれを信じてテスラの企業活動を展開しています。テスラの「中の人たち」は、なんでEV作っているの?と聞かれたら、これをミッションとしているから、と答えることでしょう。
ここで重要なのは、このミッションが、どんな世界(社会)を実現したいブランド(会社)なのか
ということの、具体的な答えになっていることだと思います。商品に圧倒的な機能差が出しにくい現代において、この視座でミッションを明確に提示しておくことは、消費者の判断に多くの影響を間違いなく及ぼすと思います。さて、ミッションはわかった。ではこれに対してどこまで本気で取り組んでいるの?これが我々の知りたいところですよね。何事も言うは易しです。
みなさんよくご存じの通り、テスラにはいわゆる販売会社(ディーラー)がありません。ネットだろうがお店だろうが、消費者はテスラから直接商品を買います。それ故に、販売価格はテスラが決めたものが世界共通となっています。さらに、一時販売店をすべて閉鎖し、ネット販売のみに全面移行する、というようなニュースも世間を賑わせました。これって、そうです、販売価格を抑えるためですよね。先のミッション遂行のために、クルマの販売方法をここまでビビッドに変貌させています。
これも有名な話ですが、テスラは広告宣伝に一切お金を使っていません。確かにテスラのCMなんてみなさん見たことないですよね。これも販売価格を抑えるための戦略の一つでしょう。なんせ、【加速させる】のですから、生半可なことでは実現できません。ちなみにテスラのツイッターアカウントのフォロワーは1600万人を越えています(2022年6月)、イーロン・マスク氏においては1億人以上です。確かに広告宣伝費は必要なさそうです。
これ、「中の人たち」が常々口にしているようなのですが、先のミッション遂行のために、“いつまでに” 何をやるか、という事。この、“いつまでに”の期間が、異常に短いそうです。時々メディアで取り上げられるイーロン・マスク氏の発言では、いつまでに、がキチっと明言されている印象です。
自動運転用の半導体がテスラタイムで仕入れられないことから自社開発に踏み切った、というニュースも過去にありましたよね。ごく一部の印象的な取り組みを取り上げましたが、ミッションに対する尋常ならざる想いがこのような形で現れているのだと思います。
こんなテスラ、2003年創業なんですが、2019年まではずっと赤字で、2020年に初の通期黒字を達成しています。先のミッションは創業から掲げられており、これを一切ブレずに追求し続け、ここ数年でようやく実を結び、さらにとんでもないスピードで業績を伸ばし続けています。
ここまで簡単にテスラの事例を紹介してきました。ここから見えてきたことは、以下のように、書くだけなら至ってシンプルな構造です。
多くの方が共感できるミッションを掲げ、
それを何が何でも遂行する鉄の意志を持って取り組むと、
そこにお金(売上/資本)が集まる
そもそも会社やブランドって「何のために」あるんだっけ?と思うと、それはやはり、【目指す社会の実現】(=【ミッション】)に他ならないんだと思います。商品やサービスは、その手段に過ぎません。
さて、ここで改めて、みなさんのブランドって、『何のために、あるんでしたっけ?』
writer
髙橋 昭之