2022.02.21
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コロナ禍で生活者の購買行動はデジタルシフトし、多くの企業がWEBマーケティングの強化を求められています。
そんな中、2022年4月に改正個人情報保護法が施行され、翌年にはGoogleがサードパーティクッキーを廃止する見込みで、いよいよ「クッキー規制」が本格的になります。状況は理解しているものの、具体的に何をすればよいか分からない方も多いのではないでしょうか?
クッキー規制によって、これまで得られていたユーザーの行動履歴などのデータが取得・利用できなくなります。クッキーを活用した追跡型のリターゲティング広告(以下リタゲ広告)を実施している企業も多いと思いますが、このような“行動ベース”でのターゲティングが不可能になるため、WEB広告の会社などは警鐘を鳴らしています。
しかしブランド戦略に携わる私としては、このクッキー規制の流れは、企業と生活者とのキズナづくりを“あるべき姿”に戻してくれる良いキッカケだと考えています。
広告に“追いかけ回される”のに嫌気がさし、アドブロックツールを導入する人も増えました。生活者側のリテラシーも高まっている今、不必要なリタゲ広告は煙たがられ、ブランドイメージの毀損になることすらあります。
クッキー規制はむしろ、生活者にとってノイズでしかなかった従来のアプローチ手法やブランド戦略そのものを見直すチャンスなのではないでしょうか。
その中で重要なキーワードになってくる「ゼロパーティデータ」と「企業SNSの価値」とは?
本コラムでは、クッキー規制がもたらす影響と次世代のブランドコミュニケーションの在り方について解説します。
「クッキー(Cookie)」とは、特定のページを訪問した履歴やログイン情報などの入力内容を記録する仕組みのことです。「サードパーティクッキー(3rd party Cookie)」と呼ばれる、第3者(WEBサイト運営者以外のインターネット事業者)が発行しているクッキーを利用し、先述のリタゲ広告はユーザーのWEB上での行動を追跡、広告を配信しています。
クッキーは、従来のWEBマーケティングにおいて重要な技術ですが、プライバシー保護の観点から、クッキーの取得や活用を制限する動きが世の中的に強まっています。まさに脱クッキー時代の到来です。
実際、みなさんも生活している中で「自分の情報って、どこまで吸い上げられているんだろう…」と不安に思うことはありませんか?最近のAppleのiOSでは、アプリケーションのトラッキングについて事前にユーザーからの許可を求める「ATT (App Tracking Transparency)」機能が搭載されていますが、世界のiOSユーザーのトラッキング許可率は、なんとたった15%ほど。生活者は企業に「自分の情報を渡したくない!」「見られたくない!」と、ますます敏感になっているのです。
iOS14.5リリース以降、全アップルユーザーのオプトイン率(トラッキングの許可率)の推移
出典:https://www.flurry.com/blog/ios-14-5-opt-in-rate-att-restricted-app-tracking-transparency-worldwide-us-daily-latest-update/
考えられる影響としては大きく3つです。
上記のように、企業にとっては大打撃とも取れるクッキー規制。そんな中、今後ますます重要になるポイントが、「ゼロパーティデータ活用」。そして「企業SNSの価値」です。
WEBマーケティングにおける環境が変化している今、我々は生活者とのコミュニケーションの在り方を見直す必要があります。これまではクッキーを活用したユーザーの「行動」ベースのターゲティングが主流でしたが、これからは「興味関心」ベースのターゲティングが重要になると考えます。
リタゲ広告は、ユーザーが自社サイトを一度訪問するなどすでに企業と接触している「顕在層」だからこそ反応率が良かったものの、行動を起こしていない「潜在層」へのアプローチは不得意。しかも、広告に追いかけ回されることでユーザーは企業にネガティブな印象を持ち、さらに悪循環に。
しかし「興味関心」ベースのターゲティングであれば、行動や年代、性別などに左右されることなく「潜在層」にも「顕在層」にもアプローチできます。この「興味関心」ベースのアプローチを可能にするのが「ゼロパーティデータ」の活用です。
「ゼロパーティデータ」とは、ユーザーが自ら同意のもとで提供するデータのこと。ファーストパーティはメールアドレスやページ閲覧などのデータですが、ゼロパーティはユーザーの購買行動や趣味嗜好、心理に関するインサイト情報を含みます。ユーザー自身が意図的に企業に共有させているデータのため、よりリアルな生のデータを把握できるのがポイントです。
またこれはクッキーに依存しておらず、規制の影響を受けにくいのです。これをどのように収集、分析し、次なる施策に生かしていくかが、これからの顧客とのデジタルコミュニケーションのカギとなるのではないでしょうか。
そして、ゼロパーティを活用した、“興味関心ベース”でのアプローチを叶えてくれるのが“SNSによるコミュニケーション”です。
ユーザーが企業やブランドに対して「興味関心」を持ち、「共感」を醸成し、「自発的に」そのアカウントに集まってくることでフォロワーとなり、双方向のコミュニケーションが成立する。企業SNSは、この脱クッキー時代に求められる、企業と顧客との関係性の原点といえるのではないでしょうか。
これまで以上に効果的なエンゲージメント戦略が必要になっている今だからこそ、生活者に寄り添うSNSの活用が、ブランドグロースに必要な一つの手法であると考えます。
例えば、スターバックスでは、Instagramストーリーズを活用しUGC(User Generated Content=一般ユーザーによって作られたコンテンツ)やVOC(Voice of Customer=顧客の声)を収集。店舗のスタッフの声を投稿したり、ストーリーズの「アンケート機能」や「質問スタンプ」「クイズスタンプ」などを使ったりして、ユーザー参加型のコミュニケーションをとっています。かわいいオリジナルのエフェクトを配布するなど、Instagramの機能をうまく活用しながら、参加したくなる気持ちを創り出しています。
また、UCC上島珈琲はLINEアカウントで友だち登録する際に味覚診断をして、顧客の嗜好を可視化しており、さらにアンケートでプロフィール情報や食べ物の好みに関する情報を入力すると、おすすめのコーヒーをセレクトしてくれます。(ここで取得している情報こそ、先述の「ゼロパーティデータ」なのです。)そのままECや店舗にて購入可能で、シームレスにOMO(オンラインとオフラインを融合する)を実現している事例です。
このように、SNSによって生活者とのキズナを育むことに成功している企業は徐々に増えてきています。しかし、既にSNSの自社アカウントはあるが、ブランドとしてのゴールや“ありたい姿”が不在のまま、単なる“運用”で事務的に回してしまい、顧客エンゲージメントが上がらない、といった悩みを持つ企業も多く存在します。
SNSと一口に言っても、アカウント運用以外にも広告配信やキャンペーン、インフルエンサー・・・など、その手法や効果は様々。何から着手すればいいのか分からない、そういったご相談をくださるクライアント様がとても増えてまいりました。
顧客とのエンゲージメントを生み出すには、決して目先の手法だけに囚われず、テクノロジーを正しく理解し、上手く活用すること。そして、自分たちのブランドパーパスや本質を見失わず、それを実現するためテクノロジーを使って何ができるか・何をすべきかを考えることが大切です。
ユーザー間で共感を持って伝播していく今の時代だからこそ、一貫したコミュニケーションデザインと各メディアのコントロールが必要不可欠なのです。
私たちYRK&では、ブランドを成長させるための「戦略構築」から、顧客接点の拡大や成長支援などの「戦略実行」まで、一気通貫に支援しています。
オウンドメディアやSNSマーケティングの効果を最大化させるため、立ち上げ時のコンセプトメイクから、最適なコミュニケーション方法まで、ターゲットに刺さる戦略をコンサルテーションしております。ブランド起点のSNS運用にお悩みがあり、本稿に少しでも興味をお持ちいただけましたら、まずはお気軽にお問い合わせください。
皆様とお会いできる日を心待ちにしております。