2021.09.07
地球温暖化による気候変動、大気や水の汚染、資源の過剰な利用と枯渇など、いま私たちは様々な環境問題に直面しています。日本においても2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、2030年のCO2削減目標を2013年比46%に設定するなど具体的なアクションプランが進行中です。同時に、環境意識の高まりから「SDGs」や「サステナブル」といった言葉もメディアを通じて、私たちの日常で頻繁に聞かれるようになりました。
このような社会的潮流により、弊社には「SDGsへの取り組みをしたいがどうすればよいかわからない」といった企業様からのお問い合わせが多く寄せられています。CO2削減など企業の社会的責任が世の中的に取り上げられるなか、もはや効率的な生産活動を追い求めるだけでは企業価値は評価されない、という認識も広まりつつあります。
例えば、パタゴニア社は「最高の商品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。そして、ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」という企業理念を掲げています。企業は商品やサービスを通して、環境負荷を軽減し社会に貢献、生活者はその活動も含めて企業やブランドを評価する、企業と生活者がともに社会貢献的活動をするのが当たり前、そんな時代がすぐ目の前にやってきています。
ではそのような状況下で、企業はどのような取り組みを始めるべきか、どういった社会貢献活動ができるのか、どのようにすれば生活者の支持を得られるのか、についてご紹介します。
まず、「SDGs」や「サステナブル」といった意識や行動は、生活者においてどこまで実践されているのでしょうか?ここでは、日常生活においてごく簡単に、だれもが協力・実践できる「ごみ分別問題」にフォーカスして、調査データに基づき考察してみたいと思います。
近年、生活の多様化にともない、ごみの種類は増え続けており、複数の素材を組み合わせた製品など、処理が困難なごみが問題になっています。適正なごみ分別が行われなければ、再資源化ができないだけでなく、焼却時のCO2排出量が増加しコストも増大、最終的には生活者の負担として返ってきます。しかし、意外とこの分別作業にも様々な課題があることが調査資料からわかります。
まず最初に、“ごみ分別問題”の前段階で、いま私たちの生活行動を制限し社会経済的にも大きなダメージを与え続けている「新型コロナウイルス」の影響が生活者の環境意識に表れていることを見てみましょう。
出典:一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会(APSP)
出典:一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会(APSP)
上記調査では、外出自粛やリモートなど在宅時間が増えた結果、「無駄なものを買わない」「整理整頓、断捨離をする」「長持ちするものを買う」など、消費行動に変化が見られました。さらに3人に1人が「環境に対する意識が高まった」と回答し、コロナ禍での生活や価値観の変化は人々の環境意識にも影響を与えていることがわかります。
もちろん、外出機会が少なくなった、収入が減ったので節約志向になった、などの理由もあるかと思いますが、
在宅時間の増加 →生活空間の見直し → 浪費抑制・使い捨て敬遠→ 環境意識の高まり
という思考・行動変化は考えられないでしょうか。また不用品をリサイクルショップやオークション/メルカリなどで処分する(合わせて15.9%)といった行動も、ものを単純にごみとして処分するのではなく「もったいない」「捨てるなら現金化」という意識のあらわれともいえます。いずれにしても、コロナ禍の制限された暮らしが生活者のごみを「すてる」ことに対する環境意識を押し上げたのは明らかです。
次に、家にいる時間が長くなったことによって増えたと思われる「ごみの処理」について質問したところ、約7割の人が、可燃ごみ、不燃ごみ、資源ごみ等、ごみの分別に悩んだ経験があるという結果になりました。
出典:一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会(APSP)
出典:一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会(APSP)
分別に悩んだものとして上記のような家電関連、ラップ、アルミ箔、陶器やガラス、刃物などの危険物があげられています。
確かにこれらは、複数の素材で組み上げられた製品であったり、可燃・不燃・リサイクルの判別がわかりにくい素材であったりするため、通常のごみ分別にぴったり当てはまるか迷うところです。
一方で、91%もの方がごみの分別が自然環境保全に向けた取り組みとして大切だと考えていると回答し、ごみの分別の仕方で自然環境保全に貢献できることを認識していることがわかります。そして悩んだ末に、正しいごみの分別ができなかったケースをほとんどの方が体験しています。その理由のトップは「素材が何かわからない等で、分別の方法がわからなかったから」66.8%でした。
出典:一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会(APSP)
出典:一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会(APSP)
もうひとつ、調査で得られた回答で興味深いものがあります。
出典:一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会(APSP)
「商品自体にすて方や分別方法が記載してあったら良いと思いますか?」という問いに対して、85%の人が「良いと思う」と回答しています。たしかに、先ほどの調査にあった複数素材の製品や、ぱっと見て素材がわかりにくい製品に、すてるときの分別方法が書いてあればわかりやすいです。
つまりは、求められていることはスムーズにごみを資源化できる、またはできるだけごみとして出さないですむ製品づくりであり、持続可能な製品ライフサイクル実現への協力姿勢、環境の悪化を最小限にとどめるためのアクションです。「ごみ削減と再資源化のために、この製品は使い終わった後の分別方法を教えてくれる」と感じることで、その企業の環境保全に対する意識や姿勢に共感してもらえることは容易に考えられます。
SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」は持続可能な生産消費形態を確保することを目的としています。これは限りある資源をできるだけ有効に使用し、より良質な多くのものを生み出すことを目的としています。それには、生産工程の廃棄物を抑制するとともに、ユーザーへ正しいごみの分別とリサイクルを促すことが不可欠となります。そこで、企業としてユーザー側の「すてる責任」をサポートすることが、サステナブルな社会実現のための企業姿勢として評価されるポイントになるのです。
SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」の具体的な目標のひとつ
ここで一つ問題があります。
各自治体でのごみ処理や資源化のプロセスの違いから、分別基準はそれぞれの地域で異なるため、例えば都内〇〇区では「可燃ごみ」であっても、△△区では「不燃ごみ」の場合もあります。これも、分別を煩雑にしている理由のひとつです。したがってある地域で「可燃ごみ」だからといってその通り製品に記載できません。
たとえば自分の自治体ではどのごみ分別区分なのかが、製品パッケージにあるQRコードから一目でわかるサービスがあればどうでしょうか?
出典:一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会(APSP)
64.2%の方が「QRコードがついている商品を購入する」と回答しています。企業が製品の分別方法までガイドすることによって、生活者の環境意識にヒットし製品購入に結び付く可能性が高いといえないでしょうか。
とはいえ、一企業が、自社製品すべての分別やリサイクルに対する全自治体の分別方法のガイドを全国の生活者に対して行うには、たいへんな労力が必要です。ソーシャルプロダクツ開発の支援事業、ソーシャル消費(社会性消費)の啓発・普及事業などを行う、一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会(APSP)では、「ステカタnavi.」という全国のごみの分別方法がQRコードからすぐわかる新しいプラットフォームサービスを提供しています。
製品パッケージに掲載されたQRコードにスマホをかざすだけで、購入者が居住している自治体ではどのようなごみ分別に区分されるのか専用サイトでガイドします。
現在APSPでは、「すて方」を「ステカタ」として、全国規模での正しいごみ分別推進を後押しするため、このプラットフォームに参加していただく参画企業様を募集しております。自社企業価値向上、製品の競合差別化など、貴社のブランディングをSDGsの取り組みとしてサポートさせていただくことが可能なSDGsアクションの一つです。このような取り組みを通して、皆様と一緒に環境保全に向き合っていければと考えております。