2021.06.11
目次
好きなブランドを思い浮かべてみてください。
ふと頭を過ぎったブランドを思い浮かべる理由は、見た目や印象、外見だけではないですよね?
そのブランド自身が大切にしている思想や温度感など、いわゆる言語化し難い「内側に潜む要素」も含め、自然と感じとってはいませんか?
この要素とは、簡単に言えば、「“ブランド独特の個性”を、“人間の人格”に例えたもの」です。
例えば、Appleを人間に例えてみましょう。
彼は、世界を変えたいという「信念」を掲げています。その信念に基づき、私たちの暮らしを常にワクワクさせる「行動」に移ります。彼が「作っているもの」は革新を生み出してきたMacやiPhoneです。彼らの行動によって、自分の生活がアップデートされた方は多かれ少なかれ、いらっしゃるのではないでしょうか?
そしてこのブランドは、「いつも驚かせてくれる情熱的な人」として感じることができます。
これは、ブランドの信念を体現する「社員達のキモチの意識合わせ」が強靭に確立されているから。
その企業の信念を背負う、社員皆さんのキモチこそが、ブランドそのものにダイレクトに影響を与え、そこに触れた相手の記憶に強く残るのです。
コモディティ化が加速する今、いくら商品やサービス、あるいはデザインが魅力を放てたとしても、この「人格」要素が欠けている限り、記憶に残るロングセラーブランドにはなれません。
ブランドを、 “人格”に例えられるかどうか。
私たちが生活している中で、記憶に残るためには、ブランドが、まるで1人の人間であるかのように感じることが不可欠になってきているのです。
前項で述べたAppleのように、人格がはっきりとあり、記憶に残るブランドになるためには、まず自分たち自身が誰よりもブランドに誇りを持ち、愛情を抱くことです。
自分ゴトになり、自ずと動き出す。
この体質へ最短で到達するために日々のプロジェクトミーティングの場で体感し見えてきた3つの視点があります。
クリエイティブの立場として、私は必ず取り入れるようにしています。
ブランドづくりの場においては、一方的な情報伝達でなく、相互のコミュニケーションを活発化させてこそ、目指すべきゴールへ近づけるものです。
一方的に聞くだけで終わらず、そこに意見を持って飛び込んできて欲しいのです。
自分だったらどうだろう?どんな発想でも構いません。何が正しいかは重要ではなく、直感的に思考を言語化し、声を重ね合わせることが、自分たちのブランドへの愛着に姿を変えていきます。
その時間、空間が「楽しかった!」「なんかワクワクしてきたぞ?」。どれだけみなさんとそんなセッションができるかどうか。
ディスカッションに想定外を起こすほど、プロジェクトは進化し、強靭になっていきます。
そのためには、一方的な“プレゼンテーション”をするのではなく、みなさんを巻き込む“ショー”にするべきなのです。
実際のプロジェクトを例に挙げて少しお話しします。あるお菓子メーカー様のディスカッションの場でのことです。同プロジェクトでは、自社ブランドの強化成長を目指し、社長、常務取締役からマーケ担当、そして実際の開発者まで多くのレイヤーの方が一堂に会し、定期的なディスカッションの場を設けています。
その場において、私は、相手を必ず楽しませることに重きを置くようにしています。
言い換えれば、相手の想像を超える、ということ。
自分たちが予想していなかった未来まで、可能性が目の前で広がっていく光景を感じるとどうでしょう?まず、単純に嬉しいですよね。そして、思わずリアクションしながら、感想を被せたくなる。
簡単に言うと、その瞬間、理屈ではなく純粋にワクワクした気持ちが芽生え、言葉を発してしまう。
私は、そのリアクションを瞬時に掴み、時にはアイデアの変化も受け入れながらこのライブ感を最大限加速させることに集中します。
どれだけセッションを重ねられるかがその会の質を劇的に変えます。終わった時には、全員の気持ちが少し前のめりになっている。結果として毎度新たな発想が全員の中に生まれ、コアブランドの存在が浮き彫りになり、そこへの新たな策を必要と感じる思考になったり、良い意味で当初以外の新たな根が何本にも増えていくことが起きています。
あくまで「仕事」ではあるのですが、仕事の領域を超え、想像を超えていくことが、そのブランドの新たな成長を促すことに必ずつながってくる事例です。
これも、実際の例でご紹介しましょう。
あるスポーツメーカー様のキッズブランドプロジェクトで、「自分たちの強みは何か?」を洗い出す場がありました。その際に参加したメンバーは、ブランドマネージャー、商品開発を担当する方など、上司、部下にあたる複数のメンバーで会に臨みました。
序盤、上司が熱い意見やアイデアについて積極的に話をされ、そのアイデアや視点をリアルタイムでホワイトボードに図や絵で、描き出していきました。
これらの意見がボード上に可視化された途端、上司ならではの意見として印象的だったものが、フラットな情報として全メンバーに視覚的に飛び込んでくるようになり、1人、2人と、被せる意見が増え始めました。
ボード上に描かれた瞬間、その情報は全員にとってフラットなものに変化します。そうなることで、お互いの立場やポジションなど身の回りの環境がボヤけ、純粋に自分なりの直感や本音で意見を放ちやすくなるのです。
最終的に、気づけば全員ボードの前で5時間強も、立ったままディスカッションに華が咲き、各メンバー一人ひとりに当事者意識の芽生えが持たれる会となり、そこから現在の絆の強いチーム誕生につながっていきました。
これこそが、ヴィジブルならではの価値なのです。一つのブランドらしさを導き出す上で、全員の意思が活発に交わる重要性はここにも活きています。
前述の2メソッドを経て、徐々に描けてきた未来のありたい姿、もしくは素敵になりそうな妄想を、1人で抱くのではなく、隣の人を巻き込み、共感、共鳴を促し、組織の単位で明確な輪郭を起こしていくことです。
フラットな意見交換を経てきた中で、改めて自分たちの強みを理解した先に、そんな自分たちは何をなすべきなのか?どんな可能性を秘めているのか?「夢」を語り合うことに近い気がしています。この「夢」を極限まで現実的な視点で、常に思い巡らせる姿勢が、後のブランドアクションへダイレクトにつながるエネルギー源となるのです。
以上の3つの無限サイクルが定着し始めると、徐々にあなた“らしい”「人格」が見えてくるのです。
もちろん、同時に「信念」や「行動」にもつながります。
おそらくこの循環を経てきた先は、自然と動き出したくなる体質にも限りなく近づいているはず。それこそ、BRANDにINGがつき、まさに“ブランディング”状態となり、健全に走り出せるスタートラインに立つことができるのです。
「Mission」「Vision」を策定することがゴールではなく、その意味に社員一人ひとりの感性がインスピレーションを受け、自ずと動き出したくなる体質になること、そしてそれを事業活動につなげていく状態をつくることなのです。
本日一番お伝えしたいことは、みなさんのブランド“らしさ“は、みなさん自身の“強いキモチ“から創造されるということ。
私自身も、キモチを最大化させるために、魅力を見つけ、引き出すことに終わるのではなく、隣の仲間たちと共鳴し、共に汗をかき、ちょっとずつ自信をつけ、気付いたら、組織全員で同じゴールへ走っている。
この循環を経営組織のど真ん中に生み出すことで、次第に、1人の人格として、命が吹き込まれていくことになります。「どうにかしたい」「どうすれば良いか?」「今に満足できていない」「もっと良いはず」など、社内において一番真摯に向き合っている方はいますか?
そこが、出発地点のサインです。
ぜひ、みなさんと出会った際には、そんな物語を一緒に描けることを、楽しみにしております。