2024.10.31
私はブランドクリエイティブディレクターとして、これまで数々のプロジェクトに携わってきました。その中で一貫して感じることがあります。それは、ブランドづくりとは単なる商品やサービスのプロモーションに留まらず、そこに関わる人々の成長にまで深く影響を与えるものだということです。愛されるブランドを生み出すためには、プロジェクトに携わる全員が主体的に動き、心からそのブランドに愛情を注ぐ必要があります。ブランドの成功とは、結局のところ「人づくり」「チームづくり」にまで繋がるのです。
ブランドクリエイティブの視点から見たとき、商品やサービスの価値を高めることはもちろん重要ですが、それ以上に大切なのは、その過程でどれだけ多くの人々の意識と行動に変化をもたらすことができるかだと私は感じています。そうした変化が、組織全体の力を底上げし、結果的にブランドそのものを強固で持続可能なものにしていくのです。
ブランドづくりの過程で、何よりもまず大切にしているのは「チームビルディング」です。個々のメンバーが自分の役割だけに閉じこもるのではなく、互いにサポートし合い、目指すべきゴールに向かって進むという意識を持つことが必要です。この「チーム」という意識が生まれるとき、プロジェクトは一気に加速し、メンバー一人ひとりが自ら考え、行動するようになります。
例えばあるプロジェクトでは、メンバー間のコミュニケーションが活発になりディスカッションが進む中で、自然と意見交換がフラットになりました。最初は遠慮がちだったメンバーが、次第に自分の意見を積極的に発言し、互いにフィードバックを交わすことで、プロジェクト全体の質が格段に向上していくのを感じました。このような場を設けることで、メンバー一人ひとりが「このプロジェクトを成功させたい」という強い当事者意識を持つようになり、全体としての結束力が高まっていくのです。
ブランド構築が進む中で、もう一つ重要なのは「プロセス」に対する意識です。結果だけに注目するのではなく、その過程で何を学び、どのように進化していくかが、最終的な成功を決定づける鍵となります。最適解を導き出すためには、どのようなプロセスを経るかが非常に重要です。単に成果を追求するのではなく、その過程でどれだけ深く思考し、成長できるかが、プロジェクトの質を大きく左右します。
そのために私たちは、質の高い「Brain Camp®(ワークショップ)」を実施することを大切にしています。"Brain Camp®は、単なるミーティングではなく、メンバー同士が互いの意見や視点をぶつけ合い、新しい価値を共創する場です。これはまさに、ジャズプレイヤー同士が魂をぶつけ合う「セッション」に似ています。即興的なアイデアのやり取りが、予期せぬ発見や革新的な解決策を生み出し、メンバーが自ら成長してより大きな成果へとつながります。
このようなワークショップを通じて、「reaction型人材からaction型人材へ」と変化していく様子を何度も目にしてきました。初めは受け身で指示を待っていたメンバーが、ワークショップを重ねる中で自ら行動し、問題解決に積極的に関わるようになるのです。この変化こそが、プロジェクト全体の成功に直結し、ブランドそのものの成長を加速させるのです。
実際、あるプロジェクトでは、メンバーが日々のタスクに追われる中で次第に受け身の姿勢に陥っていくのを感じました。そこで私は、彼らが自分自身のアイデアや意見を出しやすい環境を整え、何度もディスカッションを繰り返すワークショップ形式を導入しました。結果的に、メンバーは自分たちがプロジェクトの成否に直接関与しているという実感を得て、次第に主体的に動き始めました。このようなプロセスが、彼らを「受け身」から「主体性」へと変える力となり、最終的にはチーム全体が大きな成長を遂げました。
このように、プロセスを重視し全員が自ら考え行動することで、単なる受け身の姿勢から脱却し、主体性を持ってプロジェクトを進めることができるようになります。これこそが「人づくり」であり、ブランドを強くするための大きな力となるのです。
ここでは、私が実際に携わったプロジェクトの中で感じた「人の成長」について、いくつかのエピソードを紹介したいと思います。
あるインナーウェアブランドの立ち上げ時のことです。プロジェクトの一環としてCM撮影が行われた日、予定されていたマーケティング部門だけでなく、開発部門や営業部門のメンバーも次々と撮影現場に顔を出しました。彼らは本来、現場に来る必要のない立場でしたが、「このブランドは自分たちが作り上げたものだ」という強い当事者意識を持って現場を見守っていたのです。まるで自分たちの子どもが成長していく姿を見守るかのようなその姿勢は、私自身にも大きな感動を与えました。
このような予期せぬメンバーの参加は、彼らがこのプロジェクトに深く関わり、自然と自発的な行動を取るようになった証です。ブランドが生まれ、成長していく過程でプロジェクトに携わる人々の心にも変化が起こる瞬間を目の当たりにしたのです。
寝具業界のプロジェクトでも、同様の現象が起こりました。このプロジェクトでは、メンバー同士が自発的にディスカッションを始め、次第に社内全体にプロジェクトの求心力が広がっていきました。特に印象的だったのは、メンバー一人ひとりが「このブランドを成功させるためにはどうすれば良いか」という視点で語り始めたことです。彼らの中には、単なる業務としてではなく、ブランドに対して強い愛着と責任感を持つようになった人たちが現れました。
このようなメンバーの成長を見るたびに、ブランド構築の裏には「人の成長」が密接に関わっていることを再確認させられます。ブランドが成功するためには、そこに関わる全員が自らの成長を感じながらプロジェクトに参加する必要があり、そうした姿勢が組織全体の力を底上げするのです。
ブランドづくりにおいて、もう一つ大切にしているのは「多様性」です。チームメンバーが異なるバックグラウンドや視点を持っていることが、ブランドをより強固で魅力的なものにする鍵だと考えています。
同じ視点や価値観を共有するメンバーだけで構成されたチームでは、どうしても新しいアイデアや意見が生まれにくくなります。
一方で、異なる視点を持つメンバーが集まると、ディスカッションがより深まり、想像以上の成果を生むことができるのです。
例えば、あるプロジェクトでは、デザイナー、マーケター、営業担当など異なる職種のメンバーが集まり、それぞれが自分の専門分野の視点から意見を交わしました。この異なるバックグラウンドを持つメンバーが一堂に会することで、プロジェクトは新たな方向に進み、当初想定していなかった斬新なアイデアが次々と生まれました。これこそが、多様性がもたらすチームの強さだと感じています。
ブランドを成功させるためには、そこに関わる人々が自ら考え、行動する主体的な姿勢を持つことが必要です。そして、その過程で育まれる「人の成長」が、結果的にブランドそのものの強化に繋がります。私が携わった数々のプロジェクトでは、ブランドづくりの過程でメンバーが次第に自発的に動き始め、プロジェクトに対する責任感を持つようになった姿を何度も目にしてきました。
ブランドづくりは単なるマーケティング戦略やプロモーション活動ではありません。それは人々の意識と行動に変化をもたらし、結果的に組織全体を成長させる活動です。ブランドを愛される存在にするためには、まずはそこに関わる人々がそのブランドを心から愛し、その成功に向けて力を尽くすことが必要です。
最後に、私がブランドづくりにおいて特に大切にしている3つのポイントをお伝えします。
意志や思考を可視化することで、チーム全員が同じ目標を共有しやすくなります。目に見える形でビジョンを示すことが、プロジェクトの進行に大きな力を与えます。
本音で意見をぶつけ合い、互いのアイデアを刺激し合う場を設けること。これにより、プロジェクトはより多様な視点で進められ、新たな価値が生まれます。
どこに向かうのかを明確にし、そのためにどのような行動が必要かを示すこと。未来を共有し、その実現に向けてチーム全体が一丸となって行動することで、ブランドは真に愛される存在になります。
改めて言いますが、
ブランドづくりは、単なる商品やサービスの価値を高めるだけのものではありません。
そこに関わる全ての人々の心に火を灯し、その情熱がブランドの成長に直結するという、非常に人間的でエモーショナルなプロセスです。
ブランドが成功するためには、チーム全員が一丸となり、同じ目標に向かって進むことが不可欠ですが、それには天才的なリーダーが必要なわけではありません。
スティーブ・ジョブスのようなすごい人がいなくても、チームの力で十分に愛されるブランドを作り上げることは可能なのです。
プロジェクトを通じて感じたこの私の経験が、少しでも皆さんのブランド構築や組織づくりのヒントになれば幸いです。