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#5 就職人気企業ランキングから読み解く、採用強化において取り組むべきこと

就職人気企業ランキングから
読み解く、
採用強化において
取り組むべきこと

今回は、東洋経済オンライン「就職人気ランキング」をもとに、大手企業だけではなく中堅・中小企業にこそ大切な採用強化に向けて取り組むべきことをご紹介します。

他の国と比較しても、急速に少子高齢化が進行している日本。総務省から発表された生産年齢人口(15歳~64歳)の推移を見てみると1990年代前半には8700万人でしたが、2016年には7600万人と約20年で1000万人強減っており、2020年から2030年にかけてはさらに減少速度が加速、10年間で1000万人減ると言われ深刻な人手不足の時流を迎えています。有効求人倍率も以下のグラフの通り過去34年間で最も高く、バブル期以上の売り手市場となり、中堅・中小企業の採用は特に厳しい状況で、その有効求人倍数は8.62倍にまで膨れ上がっています。一方で大手企業は、人を採用することが極めて難しいこの状況の中、有効求人倍率0.42倍と低水準。果たして現在人気が高いのはどんな企業なのでしょうか。

全国有効求人倍率(1986年~2019年)

有効求人倍率(1986年~2019年)

有効求人倍率(1986年~2019年)

下記データ「東洋経済オンライン」の『2万人の就活生が選んだ「就職人気ランキング」』(2019年4月12日配信)を見てみると、相変わらず人気のエアラインを筆頭に大手メーカーやメガバンクなどが上位にランクインする中、注目したいのが、前年104位から10位に大幅にランクアップした丸紅です。ウェブサイトにて丸紅グループの新しい在り姿「グローバル クロスバリュー プラットフォーム」を発表し、企業のパーパスや長期的なビジョンを明確に打ち出すとともに、成長戦略やサステナビリティについても提示。今までの事業の連続的成長ではなく、新しい進化・拡張につながるイノベーションに向けて跳躍するような印象を与えています。

また、既成概念を覆す「とがった丸になれ、丸紅。」をスローガンに掲げていることから若い世代が活躍できる可能性も感じられます。

前年21位から18位にランクアップしたソニーミュージックグループは、学生の就職活動そのものを応援するという企業スタンスで採用サイトを展開。「自分の未来は自分で切り開く」ことが何よりも大事というコンセプトのもと、様々な仕事内容をキャラクター化してわかりやすく紹介しています。そして共感性の高い「就職活動での“あるある”」をコンテンツ化するなど、楽しめるサイト構成になっており、さすがエンターテインメント界の大手だと思わず膝を打ってしまいます。

またランク外ではありますが、お菓子メーカーの東ハトはバブル期後、事業がうまくいかず意気消沈していた社員たちに“仕事ができる幸福”と“チームで仕事をする意味”を伝え想いを共有するために「お菓子を仕事にできる幸福」という絵本を配りました。絵本というハートフルなクリエイティブでメッセージすることで、企業のモチベーションを一気にあげることになり、またその内容に賞賛の声が集まり、一般書籍化され今もなお販売されています。

このように企業のパーパスをはっきりさせしっかり伝えることは、就活生だけではなく働き手全てにとって最も大切なことです。さらに、その仕事は社会的な価値があり持続可能な事業なのか、そして、それらがどれだけ企業の「らしさ」とともにコミュニケーションできているか、をしっかり定義し見極める必要があります。おそらく、どれだけ儲かっていても、これらのファクターが揃っていない会社は淘汰され、競争力を失います。

『2万人の就活生が選んだ「就職人気ランキング」』(ランキング300位中 上位20位抜粋)

20年卒前半個別順位
総合順位 社名 男子 女子 文系 理系 19年卒前半総合順位
1 全日本空輸(ANA) 8 1 1 13 1
2 明治グループ
(明治・Meiji Seika ファルマ)
13 3 7 1 7
3 日本航空(JAL) 26 2 2 35 2
4 日本生命保険 2 12 4 22 4
5 大和証券グループ 3 8 6 21 5
6 伊藤忠商事 1 20 8 15 19
7 みずほフィナンシャルグループ 5 10 5 51 3
8 JTBグループ 29 4 3 107 8
9 大日本印刷 9 6 9 20 14
10 丸紅 4 14 11 19 104
11 博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ 19 5 10 165 18
12 三菱UFJ銀行 10 21 12 69 6
13 SMBC日興証券 11 22 13 128 13
14 ロッテ 34 9 25 2 17
15 ジェイアール東日本企画 18 15 14 155 15
16 りそなグループ 12 24 18 57 11
17 第一生命保険 22 17 15 80 12
18 ソニーミュージックグループ 21 18 17 78 21
19 東日本旅客鉄道(JR東日本) 7 41 19 27 24
20 野村證券 6 46 16 121 9

出典:「東洋経済オンライン」2019年4月12日配信
『2万人の就活生が選んだ「就職人気ランキング」』

他にもランクインした企業の多くが「ここで働きたい」と思われるような自社のブランドをしっかりと構築していますが、企業ブランディングは大手企業の専売特許では全くなく、むしろ中堅・中小企業にとって極めて有効な手段であり、採用強化にあたっては最優先課題だと言えます。

また就活生の企業へのより深い理解・共感を得るために言葉で伝えるだけではなく、ターゲットである学生に対し、上記でご紹介した東ハトの事例のように、伝わりやすいクリエイティブ表現を用い、コミュニケーションを図ることも重要だと考えられます。

就活生は企業のどこを見ている?

年間 1,000 回以上の就職イベントを行う株式会社DYMが今年行った「入社の決め手となった理由」に関する調査では給料の高さや福利厚生よりも「自己成長できる環境がある」「社風が自分と合っていた」がトップ。他には「一緒に働きたいと思える社員がいた」や「自分のやりたい仕事ができると思った」といった項目も重視されています。就活生がこれからの長い時間をともにする会社と自分との間に、いかに共感性があるかが入社の決め手となっていることが読み取れます。

有効求人倍率(1986年~2019年)

就活生が大切にしている「企業への共感」を創出するためには何から始めれば良いのでしょうか。まずは、持続可能性やオリジナリティ(特化した独自性)を重視しながら

に積極的に取り組むべきではないでしょうか。これらを行うことは、同時にコーポレートリブランディングの礎にもなり、また社内へも好影響を及ぼすことで副次的に離職率の低下も期待できます。

近年、目にする機会が増えた「人財」(not「人材」)という表現。社員は資源・資材ではなく資本・財産であるという考え方から使われるようになりました。志の高い就活生と出会い、未来の事業を担う「人財」を育てる第一歩である採用強化への取り組みは、コストではなく投資だと考えられている証しなのかもしれません。

採用強化に取り組むことは、今後の時代を担うZ世代の就活生が「何を大切にしている」のか、を洞察することをきっかけに、自社のあり方について深く考える良い機会になるのではないでしょうか。