2019.06.10
令和を迎えた今、製造業も小売業も、企業にとってはますます大変な時代に入りました。日本の市場は縮小傾向で、世界に出ればさらに大競争が待っています。しかし朗報です。力の強いもの大きいものが勝つ、というこれまでの市場原理、資本主義の論理が、どうも変わりそうです。そして今なら、他社にはないONLY1の商品やサービスで、生活者から強く支持されるポジションがつくれそうです。これからする話は、早い者勝ちの話です。そして、いずれやらなければいけなくなる話です。
これまでも、No.1よりもONLY1を目指すべきだ、と言われてきました。小売業であれば、「安い近い便利大きい(安近便大)」店よりも、「私が好きな店」「そこにしかない商品・サービスがある店」を目指そうということです。製造業であれば、「多くの人に買っていただきたいマス商品」よりも、「私にとってなくてはならないターゲットが明確な商品」を目指そうということになります。しかし、言うは簡単ですが、ONLY1を実現させるのは非常に難しいものでした。
「安近便大」の店は数字で作れます。価格・時間・距離・面積という数字で差別化の皮算用ができます。しかし「好きな店」づくりはお客様の感情そのものですし、「そこにしかない商品」を品揃えするのは至難です。「マス商品」であれば、広告という手段が有効でしたが、「私のためのターゲット」商品は、つくるのも伝えるのも難しさをともないます。でも、数字でつくった店は、競合店の「安近便大」のさらなる数字で負けやすく、広告が効かなくなったSNS時代は、「マス商品」をつくること自体が難しくなりました。
そんな今だからこそお勧めするのは、「ソーシャルプロダクツ」によるONLY1戦略です。一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会が設立されて5年。「人と地球にやさしい商品」ソーシャルプロダクツの知名度は、まだまだ高くありませんし、「人と地球にやさしい商品なんて、きれいごとではモノは売れない」とも言われてきました。
しかし冒頭に触れた、「市場原理」「資本主義」の構造的な大変化によって、いよいよ「ソーシャルプロダクツ」が企業戦略を左右する時代になると確信しています。理由は3つあります。
1つは、「ESG」(環境・社会・企業統治)によって企業価値のモノサシが変わること。
2つめは、このモノサシの変化を後押ししているSDGs(持続可能な開発目標)の波。
3つめは、生まれた時からネット・携帯電話があったミレニアル世代の価値観です。
これまでの平成の時代は、商品の差別化を意識するあまりに、「スペック」「性能」「効果・効能」に走りすぎ、生活者の実感とはかけ離れた商品が増えてしまいました。その結果、それらを開発する時間やお金、汗と涙がにじんだ苦労は、店頭での扱われ方や、価格競争の中で報われないことがありました。
また、ブランドイメージを高めるために、有名な俳優やモデルを使い、素敵な部屋で使うシーンを演出した結果、生活実感を伴わない商品との印象を与えてしまうこともあったと思います。商品やブランドを「理屈」で差別化しようとした結果です。「ソーシャルプロダクツ」は、「同じような商品だったら、誰かの役に立つ商品を選びたい」「あの店で買うと、いいことをした気分になる」「この商品はちょっと高いけど、その理由に私は共感している」という「感情」が、選ぶ動機になり、買う理由になり、使っていることを誰かに伝えたいという行動を起こさせるという点で、これまでの商品やブランドと大きく違います。そして、「理屈」より「感情」の動機の方が、長く強い行動を起こすのです。
私は常々、SDGsは事業・商品・サービスとして取り組むべきだと考えています。そうでないと企業のSDGsが持続可能にならないからです。ここがCSRとの大きな違いです。そして実現するうえで、最もわかりやすく着手しやすいのが、「ソーシャルプロダクツ」なのです。つまり「ソーシャルプロダクツ」は、企業の業績と社会の課題解決(SDGs)を同時にもたらすのです。
SDGsは一過性の流行ではありません。なぜなら、ESGが後ろ盾になっているからです。ESGを言い換えれば、SDGsへの取り組み姿勢や実績が企業価値を決めるということです。そう考えると、いずれやらなければならないわけで、どうせやるなら早いほうがいいはずです。「SDGsは儲かるんですか?」と、ある経営者に聞かれました。「SDGsに取り組まないと儲からない時代になりますよ」と答えたことがあります。しかし今ならもう一つ次の言葉を追加します。「SDGsは、大きなビジネスチャンスですよ」。詳しくは、今後このシリーズを通じてお伝えしたいと思っています。