2019.06.10
日本人の作る日本酒。磨きに磨かれた素晴らしい商品が沢山あります。夜の食事を賑わせる場においては、ある意味での主役。もちろんビールや焼酎にも素晴らしい商品は多いが、世界に誇るブランドとして名高いものは日本酒に多い。これに対抗してストーリーを語られるのがワイン。その奥深さは計り知れない。
私はそこまでお酒に詳しくありませんが、よく知る方とご一緒するとそれはそれは面白い。品種や産地はもちろん、国の歴史や人物、製法やビジネスの仕組みに至るまであらゆる話が語られる。「味の半分は、ストーリー」と教わったことがあるが、まさにその知識と共に味わう感覚さえある。しかし、日本酒もまったくストーリー性では負けない。ヴィンテージの考え方こそないものの、品種から仕組みに至るまであらゆるこだわりは奥深く、感動さえある。まさに日本人の丁寧なモノづくりが息づく味わいがあります。
ところが、値段を見てみるとどうでしょう。ワインは5万や10万のレベルはもちろん、20万、50万、100万円!なんて代物も存在するが、百貨店に並ぶ日本酒をずらりと見渡せど、そこまでの値段を掲示しているものは見当たらない。探せばきっとたくさんの一流品はあるだろうが、お茶の間にはそんな代物情報は、ワインほど出てこないのです。
もちろん、ヴィンテージというものに関わるその価値は素晴らしいものがあり、輸入による関税や価値の差はあります。しかし、それよりも、そもそも「価値の見せ方」が違うのではないか?という事があります。つまり、日本酒に付けられている金額は、基本的には「原価を積み上げていった結果」その金額(価値の見せ方)になっているのに対し、ワインの価格設定は、これくらいのブランド価値がある!という誇りや想いが先にある。すなわち値付けという価値の表現そのものの考え方自体に違いがあるのです。ワインは、金額自体もブランドデザインを司る1つのファクター、というふうに捉えているのかもしれません。
以前にもコラムに掲載した、島国日本の古き良き文化や真面目で謙虚なその成り立ちは、日本酒の美味しさや美味しさの糧になっていることは間違いない。しかし、その一方で「伝える」という段階においては、海外の商品に圧倒されてしまうケースがある。
独自の素晴らしい商品を作り出せる日本だからこそ、世界に通用する「伝える力」を手に入れたい。街中で日本酒を見るたびにそんなことが頭をよぎります。モノづくり一流の日本だからこそ「伝える力」を身につけ、世界と戦えるその品質を胸を張って発信していきたいものです。