2019.06.10
少し前にはなりますが、昨年ヨーロッパにブランドデザインの視察にいってきました。訪問先は、フランスとベルギー。ブランディングを生業とする私たちにとっては外せない視察地。
私たちのリブランドコンサルティングサービスにも、調査や分析以外に、オブザベーション(観察)というフェーズがありますが、まさに百聞は一見に如かず。いえ、一見は体験に如かずともいうべきでしょうか。それぞれのブランドが放つ生命力は、その土地の風に触れ、昼夜街に身を置くことでしか得られないものです。
私たちについてくださったガイドのMme.BOUTTIER AYARI(ブティエ あやり)さんは、海外生活も長く、フランスに暮らして10年以上の大ベテラン。あらゆる歴史や文化に精通している方でした。その知識の豊富さには、つい時間を忘れて聞き入ってしまうほどの魅力があり、今回の旅はその知識や経験を存分に共有していただいたことで、何倍も価値のある視察になりました。
その色々な体験の中からひとつ。「島国日本であるが故のブランド力」について。
見ての通りヨーロッパは海に囲まれた日本とは違い、陸続きに国々がひしめき合っています。山脈や大きな河川に区切られていたことで、それぞれの民族意識が高くなったといわれており、450年以上も戦国時代のような激しい時代が続きました。海に囲まれた日本とは違い、隣国と隣り合わせだからこそ、その侵略の歴史はより過激なものになったのかもしれません。
すると、それぞれの国は、少しでも攻め込まれないようにするために、戦争に勝利したことや、自分たちの民族力を、はっきりの目に見える形にして伝えることを行うようになりました。それはやがて文化になり、今に残るヨーロッパの色々な歴史的資産に影響を与えたことは間違いありません。凱旋門や、街並を完全に統制したナポレオンの時代などは、それらを代表するわかりやすい遺産かもしれません。
つまり、ヨーロッパには、これらの歴史的背景や民族性から、自分たちのアイデンティティをはっきりさせ、強く、シンプルに外に向けて強烈に自己発信する文化が根付いているのです。それは、やがて色々なものに生かされ、ファッションでは、LOUIS VUITTON、CHANEL、HERMESなどに代表される、いわゆるスーパーブランドを生み出すことにも至りました。残念ながら、ここまでのスーパーブランドは、未だ日本には存在しません。
島国日本には、クローズドな世界だったからこそ生まれた美徳や、素晴らしい文化があります。しかし、せっかくいいものは作っていても、どこか少し控えめで、あまり目立たず、中庸なものを美しいと感じる感覚がある。これは、素敵なことであると同時に、ブランディングという観点では世界に劣る要因なのかもしれません。
今、私たちの時代は、新しい交通手段や、インターネットによって、陸続きになったといっても過言ではありません。海外のあらゆるブランドがものすごいスピードで日本に飛び込んできます。しかも凄まじいパワーを持って。日本のブランドは、まさにかつてのヨーロッパのようなアイデンティティの発信が必要な時なのです。