2024.10.29
近年、企業やサービス・商品の差別優位性や価値を高めるため、または社会的な存在意義やありたい姿を明確にするために、ブランディングに取り組む企業が増えてきています。
しかし、「高級品のための世界観づくり」と捉えられたり、マーケティング戦略と混同されてしまうことも多く、本来のブランディングの捉え方や事業活動におけるメリットを理解できていない方も多いのではないでしょうか?
本記事では、リブランディング支援の専門コンサルティング会社であるYRK&が、ブランディングを正しく理解し事業活動に活かしたいとお考えの企業の方向けに、ブランディングのメリットや手法、主な種類について解説します。
Index
ブランディングと聞くと、一般的にロゴやパッケージの統一性・サービスの世界観(らしさ)を創り上げることが想像されますが、本質的な意味はそれに留まりません。
ブランディングとは、「経営戦略とマーケティング戦略をつなぎ、それに応じて遂行する活動」であり、企業の持続的な差別優位性を保ち、企業価値と収益性に貢献することにあります。
ブランディングは「Being=どうありたいか」。つまり、企業や商品の社会的存在価値は何なのかを明確に定義し、その価値を継続的に社内・社外へ浸透させる活動です。
そして、その体現は、経営者のビジョンが明確なだけでは成しえません。
自社で働く人たちが、あらゆるオペレーション業務を誇りを持って実施し、人が輝ける仕組みと環境が整って、はじめてブランディングは成功の一途を辿ります。
そう捉えると、ブランディングはインナー・アウター両軸からアプローチすることが必須条件であり、それが成功すると、強い組織、状況変化に応じて柔軟かつ迅速に対応できる組織へと改善させることが可能なのです。
そもそも、「ブランディング」という言葉は、家畜の所有者が所有権を示すために家畜に焼印(ブランド)を押す行為に由来します。この概念は現代のビジネスシーンにおいても、自社の製品やサービスが他者とは異なることを示すための差別化・区別化としての手段で用いられていますが、昨今のブランディングでは、その役割範囲は広がっています。
ブランディングは時代と共に進化し続けています。1970年代の「差別化」だけに依存していたブランディング 1.0から、1990年代には情緒価値を付加したブランディング 2.0へ、2000年代には活動化を重視するブランディング 3.0へと進化しました。2010年代には、アジリティ(敏捷性)と体質改善を含むブランディング 4.0が登場し、2020年代には新事業やデジタルトランスフォーメーションを含む共創価値のブランディング 5.0に突入しました。このように、ブランディングは企業戦略の中心的要素として進化し続けています。
※画像出典:「コーポレート リブランディング」コンサルティング・メソッド9.1(YRK&)
ブランドに対する一般的な認識としては、高級品を売る際の手法や、デザイン性の高いロゴやシンボル・名称を作り上げるという、表層的なコミュニケーション戦略が多く挙げられます。しかし、正しいブランドの概念は、企業そのものがブランドとなり、顧客が価値を感じる全ての要素を含み、全ての企業活動において一貫性を生み出すことを指します。よってブランドは商品だけでなく、インナー・アウター全ての企業活動全体を通じて形成されます。誤解されやすいところですが、ブランドとは広告やキャンペーンといった認知施策だけではなく、従業員や取引先に対しても価値を提供するものなのです。
ブランディングとマーケティングは密接に関連していますが、異なる概念です。マーケティングは顧客を引きつけ、売上を上げるための戦略であり、ブランディングは企業の価値や理念を顧客に伝え、長期的な信頼関係を築くための活動です。
しかし「マーケティング」の捉え方に関しても幾つかの視点があるため、ここではマーケティングの「広義」と「狭義」についても言及しつつ、ブランディングとの違いを解説します。
マーケティングには広義と狭義の2つの概念があります。
広義のマーケティングは、企業全体の戦略として捉えられ、製品やサービスの企画から販売後のフォローアップまで、顧客との長期的な関係構築を目指す包括的な活動です。これには、ブランディング、プロモーション、流通戦略、価格設定、顧客サポートなどが含まれます。
一方、狭義のマーケティングは、具体的な販売活動やプロモーションに焦点を当てた戦術的な活動を指します。広告キャンペーン、セールスプロモーション、直接販売などが該当します。狭義のマーケティングは、短期的な売上向上を目的とすることが多いコミュニケーション戦略を指します。
いずれもマーケティングは「Doing=どうするべきか」を具体化する役割を果たし、4P(product, price, place, promotion)に沿って、市場ニーズを元に価格や販路、広告手段を具体的に計画・実行します。
そして、その本質は「売り込むための活動」であり、売上を最大化させることがミッションです。
ブランディングは「Being=どうありたいか」。つまり、企業や商品の社会的存在価値は何なのかを明確に定義し、その価値を継続的に浸透させる活動です。
そのための、働く人たちが誇りを持って自社サービスを取り扱い、人が輝ける仕組みと環境を共創していくことも、ブランディングには包含されています。
そして、その本質は「愛されるための活動」であり、持続可能な事業活動を築くことがミッションです。
「愛されるブランディング」事例コラムはこちら
ブランドを可視化しシンボル化する際に形成する要素は多岐にわたりますが、主には、以下のものが挙げられます。
ブランディングを成功させるためには、「未来志向」の視点が欠かせません。今何ができるか?ではなく、将来どうなるか?何を成し遂げるか?といったビジョン思考で考える組織がブランディングには必要となります。
企業の将来像を明確にし、そのビジョンに基づいて戦略を策定する組織。
※画像出典:「コーポレート リブランディング」コンサルティング・メソッド9.1(YRK&)
未来の目標から逆算して現在の行動を決定する思考法。この方法は、持続可能な発展を目指す際に特に有効です。
※画像出典:「コーポレート リブランディング」コンサルティング・メソッド9.1(YRK&)
ブランドの一貫性は企業活動全体に深く関わっています。
BRANDは企業の価値を再定義し、あるべき姿を可視化する活動です。これには、ゼロベースの思考、イノベーティブな発想、デザイン思考といったイノベーションが必要です。
一方、INGはこの価値を維持・拡張するための活動で、実現可能化や最適化思考を通じて、企業の全ての活動を浸透・定着させるオペレーションです。BRANDとINGの両輪を通じて、企業は持続的な成長と競争優位性を確立し、業績の向上を図ります。
ブランディングを事業の中核に置いて実施すると、どのようなメリットがもたらされるのか?ここでは、企業価値・商品(サービス)価値を高めることを前提とし、幾つかのメリットを紹介します。
ブランディングは、目的や対象に応じて幾つかに分類されます。企業全体の価値を高める企業ブランディング、従業員や組織の力を強化するインナーブランディング、特定の商品や事業を愛される存在にする商品・事業ブランディングなど、それぞれの特性や目的に応じて異なる戦略が求められます。ここでは代表的なブランディングの種類について詳しく紹介します。
企業ブランディングは、企業自体の存在価値を明確にし、インナー・アウター両軸に浸透させ、事業自体を成長させるための戦略です。これには、企業のミッションやビジョン、コアバリューを明確にし、それをステークホルダーに伝える活動が含まれます。企業ブランディングを強化することで、企業の信頼性やブランド力が向上し、顧客や投資家、取引先からの支持を得やすくなります。
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関連資料:具体的な企業ブランディング手法を解説
商品・事業ブランディングは、特定の商品や事業のブランド価値を高めるための戦略です。商品・事業の社会的存在価値は何なのかを明確に定義し、その価値を継続的に浸透させ、顧客に愛されるための活動のことを指します。また、消費者に対して製品の優位性や魅力を訴求することで、ブランドロイヤルティの向上を目指します。成功した商品・事業ブランディングは、長期的な売上増加と市場シェアの拡大に繋がります。
関連資料:ブランディングで商品やサービスの本来の価値を磨き直す手法とメリットを解説
インナーブランディングは、自社の従業員に対して自分たちの企業理念やパーパス(社会的存在価値)に共感を生み出し、浸透させるための戦略です。従業員がブランドの一員として誇りを持ち、自発的にブランドを支持・推進するようになることを目指します。これには、社内コミュニケーションの強化や、ブランドに対する理解を深めるための教育・研修プログラムが含まれます。インナーブランディングが成功すると、従業員のエンゲージメントが向上し、企業全体のパフォーマンスが向上します。
関連資料:強い組織に成長させるインナーブランディングの手法・事例解説?
採用・育成ブランディングは、人的資本経営の時代に合わせた、人材の「採用・教育・定着」に一貫性を持って取り組む経営戦略です。求職者が企業を選ぶ決め手として、待遇や企業規模などよりも、「ミッション・ビジョン」「自己成長・やりがい」が上位を占める時代になった今、持続可能な事業成長のためには、入社後の活躍までを見据えた本質的な教育施策と、効率よく優秀な人材(入社後に活躍する人材)を獲得する仕組みの構築が必要不可欠です。
関連資料:人的資本経営時代に一貫性を持って取り組む採用・育成の進め方とは?
社名変更ブランディングは、企業名変更に伴うブランド再構築の戦略です。目的は社名を変えることではなく、企業の存在価値を再定義し、パーパス(社会的存在価値)を見直すことにあります。“社名”という企業の顔となる要素を刷新することで、顧客や投資家、求職者などアウターに向けてより魅力的に伝わるだけではなく、従業員やグループ会社などのインナーの意識・行動改革の後押しとなるパワーをより強力にします。
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事業承継ブランディングは、事業承継の機会を「会社を大きく変える最大の好機」と捉え、
バックキャスティングで将来を見据えつつ、事業そのものの価値を見直します。そして企業のブランド価値を社内外のステークホルダーすべてに発信・浸透・新事業実行を統合的に動かす戦略です。継承者が同族か否かを問わず、企業トップが代わり若返る時こそ、企業の生まれ変わりであると捉え、イノベーションが起こりやすい組織を形成することで事業成長と存続を図ります。
関連資料:事業承継成功事例をもとに戦略・思考法・具体的な進め方の解説
企業ブランディングプロジェクトは、企業全体の価値やミッション、ビジョンを明確にし、長期的な成長を支える基盤を築くことを目的としています。以下のステップに従って進行します。
直近の業績や市場環境の変化、企業が目指すべき方向性を経営層と共有します。これにより、企業の強みや課題を明確にします。
プロジェクトの目的を明確にし、ブランディングに関する基礎知識をプロジェクトメンバーで共有します。これによりメンバー全員が共通の言語を持つことが可能となり、スムーズな進行が期待できます。
PESTやSWOT分析、バリューチェーン分析を用いて、企業が直面している課題の本質を特定します。この段階では、組織全体の課題を網羅的に把握することが重要です。
ブランディング活動における判断基準を可視化し、メンバー間で共通認識を形成します。これにより、今後の戦略や方針決定がスムーズに行えるようになります。
自社の強みを多角的に棚卸し、社会に提供できるコアとなる価値を抽出します。この価値が企業ブランディングの核となります。
抽出した価値に基づき、企業のミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を策定します。プロトタイプを作成し、メンバー間で議論を行い、具体的な方向性を定めます。
策定されたパーパス・MVVをもとに、新たな事業のアイデアを出し合い、ビジネスモデルキャンバスを用いて具体化します。
市場ポテンシャルや競合調査を行い、STP分析を通じて事業戦略を具体化します。最終的には4P戦略を策定し、実行に向けた具体的なプランを作成します。
新事業の立ち上げに向けて、ロードマップやマイルストーンを策定し、部門ごとの役割分担を決めます。これにより、戦略が現場で実行されるための体制を整えます。
商品ブランディングプロジェクトは、特定の製品やサービスに焦点を当て、ブランド価値を高め、ターゲット市場での競争力を向上させることを目的としています。以下のステップを通じて、プロジェクトを進行します。
プロジェクト開始時に、直近の売上や市場環境の変化、製品が目指すべきブランドの姿をメンバー全員で共有します。必要に応じて市場調査を行い、ブランド戦略策定の基礎データを収集します。
フレームワーク(ファイブ・ウェイ・ポジショニングやバリューチェーン分析)を活用し、ブランドが直面している課題を網羅的に洗い出し、解決すべき本質的な問題を特定します。
ブランドの理想的な顧客像(ペルソナ)を可視化し、その顧客に向けて製品やサービスをどのように提供すべきかを検討します。このペルソナが、今後のブランド戦略の指針となります。
ペルソナに対して、ブランドが提供できる独自の価値を抽出し、ブランド価値マップを作成します。この価値がブランドメッセージの核となります。
抽出した価値をもとに、ターゲット市場が直感的に理解できるコンセプトを開発します。プロトタイプを用いて、目に見える形でディスカッションを行い、コンセプトのブラッシュアップを図ります。
ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略フレームを活用し、ブランドが注力すべき領域を定めます。この段階では、ブランドが競争市場でどのような位置づけを取るかが決定されます。
コンセプトを核に、ブランドを拡張するためのアイデアを出し合い、事業拡張シナリオを作成します。これにより、製品ブランドが新たな市場で成長できる戦略を策定します。
ブランディングプロジェクトの成功には、社員一人ひとりが「自分自身がブランドである」と意識することが重要であり、全員が同じ目標に向かって進むための基盤を整える必要があります。
※画像出典:「コーポレート リブランディング」コンサルティング・メソッド9.1(YRK&)
そのためには、一般的な会議スタイルやディスカッションミーティングのような形式ではなく、ワークショップスタイルで求心力を高め、参加者の主体的な参加を促してプロジェクトメンバーを巻き込むことが特に重要です。
これにより、プロジェクトメンバー全員が一体感を持ち、バックキャスティング思考で共通のビジョンに向かって進むことができます。そして、異なる部門間のコミュニケーションを促進し、全員がプロジェクトの目的を共有することで、ブランド価値の最大化を図ります。
CTA 自社ブランドに秘められた可能性を最大限に引き出す、YRK&独自のワークショップ「BRAINCAMP®」公開中。
ブランディングはデザイン性の高いロゴやシンボル・名称を作り上げるという、表層的なコミュニケーション戦略だけではなく、企業や商品の社会的存在価値は何なのかを明確に定義し、その価値を継続的に社内・社外へ浸透させる、全社員を巻き込んでの事業活動です。
チーム全体が共創型でビジョンを導き出し、一丸となって解決策を模索するプロセスそのものを重視することで、ブランドがより強固なものに変貌を遂げます。
YRK&では、様々なブランディングにおけるプロジェクト全体の戦略立案、プロジェクトメンバーを巻き込んだワークショップ企画とファシリテーション進行、デザインアウトプット、社内外への浸透施策までを一貫してご支援が可能です。
「ブランディングプロジェクトの進め方に迷っている」といった場合は、是非一度YRK&へお気軽にお声がけください。
Writer
ReBRANDING magazine 編集部
参考資料
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