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TMOT PLATFORM COMPANY:TMOTとは「Third Moment Of Truth(第3の真実の瞬間)」。生活者が商品を「愛用する“真実の瞬間”」を起点にブランドの本質的価値を向上させるマーケティング・サービスを提供後、売場画像共有サービス「MiiNA(ミーナ)」、画像投稿プラットフォームサービス『C-SO(シーソー)』をリリース。2013年「TMOTチーム」として立ち上げ、事業部を経て、2017年9月よりカンパニー設立。
UCI Lab.:UCIとは「User Centerd Innovation」。生活者起点でマーケティングやイノベーションを実現するために研究と実践活動を行う専門組織。デザイン思考をいち早く取り入れ、研究者・専門家の知見やノウハウを活かしたワークショップを通じて新商品企画や新事業開発をサポート。2012年「UCI Lab.」として立ち上げ、2017年9月よりカンパニー設立。
橋本:私がまだ営業職だった7~8年前ですが、これまで通りのやり方だけでは、遠くない将来に業界の競争環境がもっと厳しくなるだろうという強い危機感を持つようになったんです。そこで、これまで得意としていたマーケティング支援業務をベースに、デジタル領域に特化した新規事業を始めたいと社長(現会長)に直訴しました。社会や市場の動向を分析し、自分たちの強みを活かすために何ができるのかを1年かけて考え、そこからTMOTというコンセプトと、愛用者を起点としたリサーチのサービスが生まれました。
渡辺:私もプランナーをしていたときに、クリエイティブの裏づけ調査をするだけだったり、収益につながらなかったり、その位置づけの弱さに疑問を抱いていました。考えることで価値を生み出すとは、どういうことだろうかと。できたものをどう売るかではなく、もっと本質的に、ものをどう作るかを極める。それがプランニングの本来的な価値ではないかと考えました。
橋本:私たちがまず最初に作ったのは、自社開発した「PicSol(ピクソル)」というリサーチシステムを活用する「TMOTマーケティング」というサービス。生活者が商品を愛用するシーンや感想を画像とコメントで投稿してもらい、それらの情報をワークショップ形式で分析する仕組みをパッケージ化したものです。その後、リサーチシステムを活用して流通の売場写真を一覧で見られないかというクライアントのご要望から、2つめのサービスとして開発したのが「MiiNA(ミーナ)」。さらに、「PicSol(ピクソル)」で収集していた生活者の商品利用シーンなどを、もっと大量かつ継続的に集めたいということで、オープンプラットフォーム形式のWebサービスに作り変えたのが3つめのサービス「C-SO(シーソー)」です。
渡辺:もともとリサーチのプラットフォームであった画像を共有するサービスに価値があることをクライアントとのやりとりのなかで発見し、その方向に事業を広げていったのは非常におもしろいですね。UCI Lab.の場合は、YRK&のビジネス領域であったコミュニケーションを核としながらも、一方通行ではなく、クライアントと対話することを通じて何かを生み出すこともコミュニケーションのひとつと考えました。その頃、企業においても積極的に外部の力を取り入れて商品開発をしていこうという動きが出てきていたこともあり、それまで広告代理店がやってこなかったイノベーションの領域を極めることが私たちのめざす方向だと結論づけました。
橋本:私たちの手掛けるサービスに共通するコンセプトは「見える化」。これまでのマーケティング活動では“知る”“買う”“使う”“愛用する”、生活者が商品と接する瞬間が「見える化」できていなかった。それが、SNSやスマホなどの携帯端末の普及によって、誰でも簡単に写真を撮りネット上で共有するようになり、今なら各瞬間を「見える化」するためのプラットフォームサービスを作ることができるだろうと思いました。これまでにない、自分たちにしか作れないサービスを作るという思いは強かったですね。
渡辺:UCI Lab.を立ち上げた当時も、デザイン思考が注目され始めていましたが、世の中でバズワードになったタイミングでは遅い。まだ始まったばかりのタイミングで、クライアントと協働しながらノウハウを蓄積していくことを試みました。今ではワークショップも100件以上の実績ができ、当初の構想はカタチにできたので、今後はこれにもっと熟達していきたい。
橋本:新規事業を立ち上げた当初は社内にほぼ前例がなかったので、全て手探り状態でやっていく大変さがありました。事業立ち上げから1~2年で簡単に成果が出るほど甘くない。それでもなんとか堪えながら、独立チームになって3年目でようやく通年黒字化できました。主力のASPサービスも、今期中にはのべ100社の導入を達成する見込みです。
渡辺:カンパニーを作ることがゴールではないし、全員が新規事業をやる必要もないけれど、自ら手を上げれば、本来の仕事をやりながら、事業を育て、ある程度カタチになれば任せてもらえる。それができるのはいい会社だと思います。今の仕事のおもしろさは、まったくのゼロから新たな価値を生み出すこと。クライアントと対等な関係を築き、専門家としてきちんと答えを出す、そのプロセスがいちばんおもしろいですね。UCI Lab.には営業がいません。多くのクライアントを開拓するより、ひとつのクライアントと深く関わっていくビジネスモデルだからです。クライアントのニーズに対して、それ以上の価値を提供できるよう専門性を発揮していきたい。
橋本:UCI Lab.は、個人が圧倒的に高い専門性や能力を持っていて、それを事業活動のなかで対価に変えていく。一方、私たちは、独自性はあるが専門知識を持っていなくても誰でも簡単に利用できるサービスを開発し、より多くのクライアントにご利用いただくことを目標にしている点でUCI Lab.とは対照的。でも、世の中にないものを作りたいという思いは共通ですね。
橋本:全く想定していなかったクライアントからのご要望や利用方法の中から斬新なアイデアやサービスが生まれることは多いですね。逆にそういうものだと思って、いきなり100点のサービスを目指すのではなく、あえて不完全な段階でリリースをしてトライ&エラーを繰り返しながらスピーディーに改善していく。そのように世の中にないサービスを作って、クライアントにも評価していただけた時はすごく嬉しい。
渡辺:UCIでもアカデミックな分野で研究している方々の理論をプロジェクトに取り込んでいます。彼らとフィールドワークやディスカッションをすることで、まだまだ私たちが従来のマーケティングの手法にとらわれていることに気づかされます。新しいものを生み出すために、自らに揺さぶりをかける場を自ら作る。そうしなければ生き残れない。
橋本:例えば、「MiiNA」や「C-SO」で「見える化」した情報をどう活用するかなど、UCIとも連携できる可能性があります。市場の変化はとても速いので、今受け入れられているサービスも数年後にはどうなっているかわからない。だからこそ、自分たちの強みを時代のニーズに合わせて変化させ、新しいサービスを次々と作り続けられる組織にしていきたいですね。
TMOT プラットフォーム カンパニー 代表
2003年4月株式会社 YRK and 入社。営業・プランナー職としてマーケティング支援業務を担当。2012 年から新規事業開発に取り組み、自社サービスの開発からマーケティング、セールスまでを管理する事業責任者として複数のASP サービスを立ち上げています。
【提供サービス】
・愛用者を把握・分析するリサーチサービス『TMOT Marketing』
・店舗オペレーションを最適化するASPサービス『MiiNA』
・顧客の声を見える化する画像投稿ASPサービス『C-SO』
UCI Lab.所長
2000年株式会社 YRK and 入社。マーケティングプランニング部にて、外資系日用雑貨品メーカーやスポーツ用品メーカーのプロモーション企画や調査などを担当。2010 年立命館大学院経営管理研究科(MBA)修了。2012年、社内研究開発機関としてイノベーション支援を行う「UCI Lab.」を設立。主に家電メーカーや食品素材メーカー、化粧品メーカーなどの商品企画開発/新事業開発/先行技術開発部門に対するプロセスコンサルテーションを実施。生活者起点で商品/ サービスの価値を創造するプロジェクトを多数手がけています。