2023.08.16
私は常時、10~20の企業様の様々なコンサルテーション案件やコミュニケーションデザインに携わっているのですが、最近BtoB企業様からブランディングのご相談をいただくことが爆発的に増加しております。これはBtoB市場においてブランディングニーズが確実に伸長している証拠だと思っています。
一方で、数々のBtoB企業のご担当者様とお話している中でお悩みとして課題に挙げられるポイントも顕著。特に耳にする機会が多いのが、「BtoBブランディングが必要なのは理解できるが、役員などを納得させるだけのメリットを提示できない」ということです。
本稿においては、そんなお悩みの声にお応えしてBtoBブランディングのメリットを出来る限り端的に、分かりやすくお伝えしていこうと思っておりますので、コラムをお読みいただくほんの少しの時間お付き合いください。ではよろしくお願いいたします。
Index
結論からお伝えすると、BtoBブランディングのメリット・魅力は
この3点に集約することができます。
では、ひとつずつ解説していきましょう。
これには日本固有のマーケット特性も大きく関係してきます。そもそも国内企業のうち約半数にあたる48.9%の企業が創業50年以上が経過。30年以上の企業まで含めるとその割合は約8割の78.9%にまで達し、歴史ある企業が多く独自性が強いマーケットです。
そもそも日本は100年企業が世界で最も多い国でもあり、よく言えば耐久性が高いブランドが多いマーケットですが、悪く言えば柔軟性がなく新陳代謝が悪いマーケットとも言えるでしょう。
この背景には、戦後の高度経済成長期の中で人口増加に伴い成長してきた事実があるわけですが、歴史ある企業であればあるほど今までのやり方に固執してしまうものです。また、このコロナ禍を通して変革を志す企業様が多いのも事実ですが、利益を生み出すために効率化を突き詰める一方、「社員が自社ブランドに“自分ゴト感”を持たなくなった」「効率的なスキームに頼るがあまりの判断力の鈍化」などなど、コロナ禍に突入し丸2年が経過し変革の兆しが見えてきた中で、このようなご相談をいただく機会が増えてきているのも事実です。
ブランド戦略を構築する中で自社の価値・強み・特徴をしっかりと見出し、その価値と連動する形で自社ブランドや企業のありたい姿を設計する。そしてビジョンワードやクリエイティブをしっかりと定義付けすることによって、社員は自ら判断し、ビジョンに沿って商品企画やPR、プロモーションなどの一貫性を持ったブランディング活動(ブランディングにおける“ing”)が出来るようになるのです。ブランドに求心力が生まれ、社員自らが判断し活動に繋げていける。これがまず一点目のBtoBブランディングによってもたらされるメリットです。
では2点目を見ていきましょう。
このロジックを理解するには、まずブランドの構成要素を知る必要があります。
結論からお伝えすると、ブランドは大きく捉えると「識別記号」と「知覚価値」の掛け合わせで構成されています。「識別記号」とは、その商品や企業などブランドを識別する文字や形、色など生活者や顧客がブランドを識別する際の、記号的要素です。分かりやすいところでいくと、コンセプトワードやステイトメント、ロゴや商品名などがそれにあたります。
もう一つの「知覚価値」とは、識別記号を通した際に生活者や顧客がブランドに対して直感的に感じる便益や人格、感覚、事実を指す“言葉”や、“具体的な事実”などです。例えば「炭酸飲料」といった固有特長や「身体に良いエビデンス」といった科学的根拠。さらには「ナチュラルなテイスト」といった情緒的な趣向がそれに当たります。
これら「識別記号」と「知覚価値」が上手く結びついた結果、その企業や商品特有のらしさが抽出されるという方程式が成り立っているのです。
ここから市場競争力のお話に戻りますが、市場競争力とは『他ブランドよりも優れた価値(優位性)or他ブランドとは異なる価値(独自性・差異性)』を抽出し、市場に認識させることで養われるものです。特にコモディティ化し、優位性が見出しにくくなっている現状の市場において、BtoB企業独自の“らしさ”を見出すことの重要性は高まっていると言えます。
以下は以前書いたコラムの中でも掲示したリサーチデータ(CEBがベンダー企業で働く従業員9000名に行ったBtoB調査)になりますが、『取引を行っているBtoB企業に対して独自のメリットを感じ、またそのメリットを十分に理解しているか』という質問に対して実に86%の顧客が“NO”を突き付けた現実からもBtoB企業がブランディングを行い市場競争力を身に付けていく必要性を読み解くことができると思います。
続いて3点目に参りましょう。
この答えはシンプルです。様々な価値観や多様性、ニーズも多岐にわたり大々的なPRやプロモートもセットで思考する必要があるBtoCブランディングと異なり、ステークホルダーが限定されるBtoBブランディングの方が、効率的にコミュニケーションを図ることができ、且つ効果にも直結しているからです。
言い換えると、取引単価も高く業種や購買プロセスにおけるステークホルダーも限られていることから、識別と知覚の対象(ブランディング)となるターゲット層が狭く、ビジネスを支える効果を圧倒的に得やすい、とも言えるのではないでしょうか。
さて、ここまではBtoBブランディングを行うべき“理由やメリット”について言及してきました。ここからは、BtoBブランディングに必要なステップについて解説していきます。ステップは至ってシンプル。ポイントは「現状と未来の話を混同して考えない」ことです。
このわずか6ステップ。そしてこの中で間違いなく肝となるのはステップ6の“ブランドの体現”です。ステップ1~5についてはいわゆる『WHAT TO SAY』。自社ブランドをどう言うかであり、ここまでは比較的とんとんとリズムよく進行します。一方ステップ6はいわゆる『WHAT TO ACT』。自社ブランドをどう体現し、どう活動するか。このフェーズに差し掛かった途端にプロジェクトスピードは一気に減退します。
この理由は明白で、一つ目はリーダーシップを取って自社ブランドそのものを牽引し、意思決定できる人材がいないこと。そして二つ目は実際にブランドを体現、活動していく社員にブランディングの戦略そのものを浸透させる術を持っていない、ということ。そしてこれらの課題に共通しているのはBtoBブランディングにおけるプロジェクトデザインに問題があるということです。
例えば一つ目のリーダーシップ人材の課題を解消するために弊社では、「RACIチャート」など様々なフレームワークを用いて、プロジェクト内容に応じた最適な進捗管理を図ります。これは責任の所在を明らかにするのはもちろんのことながら、BtoBブランディングに関わる人員や社員の“決心と結束”を作り、プロジェクトそのものに推進力を生むのに有効です。
続いて二つ目の、実際にブランドを体現、活動する社員への浸透課題については、弊社ではプロジェクトそのものを役員や決裁権を持つ人員のみで進めることなく、グループリーダーや課長・係長など現場社員と近しいレイヤーの人材をアサインしています。
ともに課題を認識し思考を行う共創型プロジェクトをデザインすることで、社員一人一人に当事者意識を植え付け、浸透を図っています。
前述した通り、BtoBにおけるブランディングの必要性や重要性がまだまだ認知されていない状態の中、決まったものや戦略を現場に下ろす、という旧態依然の手法を行っていては、それこそ効率的にシームレスにブランディング戦略の浸透を図ることが難しいためです。
ここまで色々とお伝えして参りましたが、BtoBブランディングに取り組んでいない、必要性を感じていない企業が多いからこそ、効果が顕著であるのもBtoBブランディングの醍醐味であると言えます。そして売上拡張はもちろんのことながら、“識別化・差別化“を行うことによって「人材採用」や「組織の求心力強化」など、企業そのものの本質的な価値をボトムアップさせる魅力を秘めています。
コンサルティングファームである我々もBtoB企業。知覚記号やプロモーションが重要で、ブランディングが不在(必要なかった)であったヤラカス舘時代から、ありたい姿として理念を策定し独自の価値を抽出。ブランドサイトの再構築、インサイドセールスの実施、セミナーでジェネレーション・ナーチャリング、人材育成やスキーム開発を行い『YRK&』としてBtoBブランディングを体現してきました。
我々のように企業独自でBtoBブランディングを進めていただくことも可能ではあります。しかし、弊社のようなコンサルティングファームが介在するからこそ、言いにくいことが言える、数百を数えるコンサルテーション経験から導き出したスキームを活用しながら売上に繋がるブランディングが行える、様々な業種・業界の事例活用で社員の方々の当事者意識の装着やスキル知見のボトムアップを図ることができる…などなど、あらゆるメリットがあるのも事実です。
本稿に少しでも興味をお持ちいただけましたら、まずはお気軽にお問い合わせください。
皆様とお会いできる日を心待ちにしております。