2024.03.29
名は体を表す
あなたは、自社の社名の由来をご存知でしょうか。日本国内には約400万もの企業組織が存在し、その全てに名称が付けられています。子どもに名前を付けるとき、「こうなってほしい」と願いを込めて命名するのと同じように、企業名称も「創業者の想い」、「事業ドメイン」、「目指す姿や理念」など様々な背景や想いから命名されるものです。
ただ、子どもの名前と企業名称の大きな違いは、状況に応じて名称を変更できるという点です。昨今の劇的な環境変化を受け「企業名と事業のズレ」や、「目指す姿の再定義」などを理由に社名変更を検討する企業が増加しています。今回は、「社名変更ブランディング®︎」を展開するYRK&が、直近の動向も交えながら、社名変更プロジェクトを推進させる上で、重要な視点を紹介していきます。
当社では、社名変更を伴った企業ブランディング支援を行なっていますが、日々様々なお客様からお問合せをいただきます。例えば、製造業のお客様、施設運営企業、大学などで、業種/業態、創業年数、事業規模も異なります。私は、社名変更の過程において、将来の社名と企業ブランドをいかに成長させていくかという中期戦略策定の支援を行なっていますが、最近の動向として感じることが2つあります。
まず、ひとつ目はコロナ渦を経て、非常に多くの会社が事業転換または目指す企業姿を再設定しているため、屋号とのギャップが非常に大きい企業が増えたということです。その背景にあるのは、コロナウイルスの蔓延が影響しています。流行直後の2020年ごろ、各企業とも、直近の収益を確保するために、目先の事業再設計に奔走。そこから約3年が経ち、当時の新たな活動が軌道に乗り始めていたり、事業再構築がひと段落して事業単体ではなく企業全体の目指す姿を再設定するタイミングに差し掛かっていたりしています。数年前は社名変更のご相談よりも、新規事業立案や事業戦略の再構築のご相談が多かったですが、直近は社名変更も見据えた将来の企業像の再構築のご相談が増えてきました。
ふたつ目の動向は、社名変更をインナーコミュニケーションの手段として使いたいと考えるお客様の増加です。リモートワークの導入やコロナ禍の後遺症として残る社内コミュニケーションの希薄化や社員エンゲージメント対策として、社名変更のプロセスに社員を巻き込みながら進めたいというお声を非常に多くいただくようになりました。当社の社名変更ブランディングは、進行プロセスにブレインキャンプ®️などの社員間の議論ワークを組み込んでいるため、ご相談が増加している背景の一つかもしれません。
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「社名変更ブランディング®」コンサルティング・メソッド
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社名変更を検討している企業の皆様からのお言葉で、「●年●月までに、社名を変更したい」という言葉をいただきます。この言葉が決して悪いわけではないですが、抜け落ちてはいけない目線は、「企業にとって社名変更は企業ブランドを作る上での手段であり、社名変更そのものがゴールではない」ということです。見据えるべきは、社名変更そのものではなく、言うまでもなく社名変更後の企業成長です。例えば、「事業構造変化に伴う社名とのズレ解消し、更なる飛躍を目指したい」、「企業ブランドを向上させ、採用強化につなげたい」、「海外進出に伴うグローバルでも通用する企業となりたい」など目指す企業になるために社名変更を活用するのです。
上記目的を達成するためには、目指すべき企業像とそこにつなげるための戦略と戦術が必要です。しかし、社名変更独特の慣れない手続きやタスクの多さ、数多くの関与部門や関係各所への立ち回りなどによって、本来のゴールを見失い、いつの間にか名称を変更すること自体がゴールになってしまいがちです。
最終的に、社名変更(名称変更)は無事完了したが、その後の浸透計画や事業加速アクションが不足し当初のゴール達成には、想定以上に時間がかかるなんてことが、普通に起こり得てしまいます。
そのような事態にならないためには、プロジェクト発起時に明確なゴールの可視化と判断基準づくりが必要です。そして、初期段階でのゴールの可視化は、文字情報ではなくイラストや写真などの視覚情報で可視化することも重要な要件となってきます。
社名変更自体がゴールになってしまう要因の一つに、プロジェクト進行の判断基準が曖昧であることが挙げられます。社名変更は、その企業にとって誰も経験したことがない前例なきプロジェクトとなるため、「こうすればスムーズかつ自信を持って進められる」という判断基準が存在せず、高難易度案件となってしまうのです。
また、社名変更のプロセスでは、企業資産の洗い出しのため経営層・従業員を巻き込んだヒアリングや社内ワークショップなどを開催するケースも多く見受けられます。ただ、バラバラのベクトルや階層の異なる情報をまとめ上げていくためには、客観的な視点の導入と明確な判断基準がなければ、プロジェクトや企業の目指すブランド像が迷走します。
社名変更までのプロセスに社員をどこまで参画させるのかは、企業によってケースバイケースですが、重要なことは、初期のプロジェクトデザイン段階で「何のためにその部署や社員を巻き込むのか(参画基準)」「意見の良し悪し(判断基準)」について明確に定義してから取り掛かることです。加えて、正しい基準を作るためには、企業全体を客観的かつ俯瞰しながらまとめていく人材が必要であるため、専門の外部パートナーを頼ることも有効です。
とあるプロジェクトをご一緒した経営者の方が「社名変更プロジェクトで、改めて企業ブランドは人の力で成立していると実感した」とおっしゃっておられました。この言葉の通り、社名変更を好機として事業や企業ブランドを加速させていくためには、従業員の内発的動機をつくり、インナーブランディングから会社の未来を作っていくことが必須になります。しかし、実は社名変更は従業員の関心が低いテーマでもあります。
社名変更プロジェクトは、経営層の関心が非常に高く重要案件として扱われるため、会社全体の熱量が高いように錯覚してしまいます。ただ、従業員は決してそうではないケースがほとんどです。従業員は、社名変更が「自分にとってどのようなメリットがあるのか」「どのように会社が良くなっていき自分に返ってくるのか」がイメージできていないため極めて受動的な態度と成りがちです。加えて、社名変更に関わる意思決定は経営層で行われる場合も多いため、従業員の意見や声は軽視されがちな事も受動的な態度になる要因の一つです。しかし、新社名をステークホルダーへ浸透させ、事業を加速させていくのは、“経営者ではなく、紛れもなく各従業員”なのです。
社名変更前後は、従業員との接点づくりや巻き込み方が非常に重要なファクターとなってきます。従業員の内発的動機を作り出し、社名変更後のブランド加速のハブとなってもらうためには、「従業員ヒアリングやセミナー」や「各種検討アクション」、「社内向け発表会」「社員を巻き込んだ新社名浸透アクション」「新社名をきっかけとした新規事業」などの社内アクションを決して節約してはいけません。
社名変更は、足元の地面 (目先の登記変更)ばかりに気を使っていては、本来のゴールを見失ったり、社員の巻き込みが不足したりと、思い描いた企業ブランド像に中々近づくことができません。プロジェクト推進にあたっては、「企業のありたい姿/未来の理想像」、つまり“星”となる目標を常に念頭におき、かつ“大きく煌めく一番星”としてメンバーの誘引を作り出し、立場の異なるステークホルダーを巻き込めるかどうかが鍵となります。
繰り返しになりますが、社名変更は、単なる“社名”という会社の顔を刷新するだけではなく、事業拡大や企業ブランド力向上といったアウターへの好影響、さらにグループ内・従業員といったインナーへの好影響をもたらす絶好の機会です。ただ、前例がないプロジェクトであるため社内メンバーだけでは円滑に進行できないケースも多数存在します。
「社名変更ブランディング®︎」を展開するYRK&では、ブランディングストラテジストとクリエイターが連携し、本質的な問題点から丁寧にリ・ブランディング。スタート後もブランドの成長を継続的に支援すると同時に、社名変更時に伴う商標調査関連や、登録などの権利に関わるリーガルサポートなども行います。社名変更を機に事業及びブランド力を向上させたい方は、是非お気軽にお問い合わせください。ご一緒できることを楽しみにしております。
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