2022.06.24
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生活者は、実は我々が思うよりもドライにブランドを見ています。企業様が努力したそのプロセスや、複雑なビジネスの商流は全く無視され、その「ブランドの価値」は、驚くほど瞬時に判断されてしまいます。スマホの中では、指先だけで簡単にスキップやブロックされてしまう時代。これは、リアルの店頭でも同じ。強烈に自己主張をしていなければ、その存在にすら気づいてもらえないことも多くあります。しかも、人間は毎日「74%の情報」を翌日には忘れてしまうそうです。
では、逆はどうでしょう。実は商品に差別優位性や、際立った魅力がなくても、「見せ方のうまさ」や「価格の勝負」「データをベースとしたターゲティング」などで、何度も接触してくるブランドを見たことはありませんか?そもそも、それらの商品を「ブランド」と呼んで良いかは別として、あまりにもあの手この手で出てくると・・・つい気になってクリック!なんてことも実際あるのではないでしょうか。買いはしないまでも、興味関心を一時的に惹き、一度だけでも買ってもらおうとする商品も散見されます。
色々な価値観があるため、それらの商品を必要と思っている生活者がいらっしゃるのは良いのですが、本来的ではない買い物をしてしまっているのも事実です。そんな商品の中に、素敵な魅力のある皆様の商品やサービスが埋もれてしまうことは、本当に良くない状態です。いわゆる広告のパワーゲームの中で戦うことになってしまってはいけません。
では、そんなドライな生活者に、メッセージを伝え続けなければならない負担を、どう最適化して行けば良いのか?ここで重要になるのは、「顧客」と「ファン」の違いを明確に掴んでおくことです。
「顧客」と「ファン」の違いは上図のように定義できます。
「顧客」の場合は、その商品を気に入って購入してくれているので、他にいい商品が存在しない間は買い続けてくれますが、優れた商品が出れば、気移りしやすい。しかし、「ファン」の場合は違います。「ファン」とは、その商品を応援してくれているので、次の商品に期待してくれたり、意見をくれたり、一緒に商品を作っていくような行動さえ起こります。すぐに買うかどうかは分かりませんが、その商品の売上以外のあらゆる面を支えてくれる存在なのです。
その代表的な接点は、リアル・デジタルに関わらず「コンテンツ体験」による継続的な場の提供です。決して広告ではありません。「ファン」でいてくれるお客様は、常にそのコンテンツ体験に反応し、様々な情報に反応をしてくれるのです。デジタルコンテンツであれば、いいね!やシェアや、コメント。リアルの場であれば、クレームもありますが、意見や、その時のお客様の笑顔は、次の商品のヒントになります。それらは、私たちの調査をする時間やコストも削減してくれるかもしれませんし、調査では取れない貴重な情報も含まれています。
「Starbucks Coffee」のTVCMやWEB広告を目にすることはありますか?ほとんどの人がないでしょう。私も見たことがありません。しかし素晴らしいブランドです。ブランドは広告以外でも創ることができることは彼らが証明してくれました。そもそも、「広告戦略」ではなく、「ブランド戦略」を軸に置く彼らは、戦い方が根本的に違うのです。すなわち「ファン化」とは、商品を買っていただくためにかかる「広告コスト」ではなく、ブランドを育ててくれる「成長投資」だと捉えるべきなのです。
上記の、「顧客」を取りに行くか、「ファン」を育てていくか。この二つの目的の違いを比べてどうでしょう。そもそも、広告メディアに大きな投資をする手法は、私たちの全てのクライアント様が採用できる方法ではありません。であれば、残る方法は指名買いしてもらえる「ファン」を地道につくること。
「ファン」になってもらうための「コンテンツ体験への投資」は、マーケティングのコストの考え方を一気に変え、商品の作り方や広がりまで変わってくるのではないでしょうか。まずは、ブランドの価値をもう一度見直し、部署を横断したプロジェクトで、「ブランド戦略」を中心に据えた戦い方にトライしてみませんか?