2022.03.10
「ブランドの理想は掲げているが社内・社外で浸透させることが難しく、結果、強いブランドを創ることに失敗してしまう・・・。」
これは、とあるクライアントのご担当者との会話で出てきた言葉です。
このようなお悩みは、他のクライアントからもよく出てきます。
「上層部が決めたブランド戦略に対してきちんとした説明がなく、現場としては腹落ちせずに進むこともよくあって・・・。」
「流通商談の際でも、ブランド本来の価値を伝えられず、個人ごとに進めやすいように商談してしまったり、ラインナップを見せるだけになってしまう為、市場にブランド価値が浸透しないんです。」
「そもそも、ブランド担当者自身がブランドの方向性にしっくりきていないんです。」
これらの原因のほとんどは、「ブランドの目指す姿」が「複雑」もしくは「あいまい」な為に、ブランドを発信・育成するはずの関係者の間に、共感が得られていない為です。要は、外に対する発信はしているが、肝心のインナーブランディングができていないということ。
逆に、関係者全員が「このブランドが好きだ!」「このブランドの存在価値は◯◯だ!」という想いを持つことができれば、外への発信に一貫性ができ、結果、強いブランドが生まれます。
今回は、「強いブランドを構築するためのプロセス」について紐解いてまいります。
キーワードは「感動」と「シンプル」です。
様々な企業様のブランディングをお手伝いする中で、「強いブランド」ができあがる際には、ブランド創りの過程において必ず「感動」があります。
どのプロジェクトにおいても、ブランド価値について徹底的に議論しますが、初期の議論の段階では、ブランドの構成要素は見えてきても、「何を目指すブランドなのか」はまだ見えてきません。
そこに、「ブランドステートメント」「ストーリー」「ロゴマーク」「ビジュアル」といった、誰もが瞬時に理解できる「人格」が吹き込まれることで、ブランドの姿が初めてリアルに浮かび上がるのです。この時、関係者全員に「我々のブランドの方向性はこれだ!」「これがやりたかったんだ!」という「感動」が生まれ、強い共感を創ることができます。これは、ブランド構築プロジェクトに私のようなクリエイターが介在する大きな理由だと考えています。
例えば、オーブントースターやコーヒーメーカーで有名な「バルミューダ」では、事業内容を「白物家電メーカー」とは言っていません。「心躍るような素晴らしい体験」を提供する会社であるというスタンスを貫いています。社長含め、全社員が「プロダクトへの熱い愛」と「プロダクトを通じた感動体験」を重視しています。
単にお客様に感動を届けるということだけではなく「社員自らが感動したことをお客様にも共有する」ことが、ファンの拡大につながるのです。
このように「感動」を作ることは、強いブランドを創る上で、とても重要な要素となります。
強いブランドを創るにあたってまず重要となることは、プロジェクトメンバーの選定です。
マーケティング、宣伝、商品企画、営業、開発 等、その商品・サービスに携わる全ての部署のメンバーが初めからブランド創りに携わることで、各部署がブランドのあるべき姿を正しく理解した上で、発信、さらには成長させることが可能になります。
では、どんなプロセスを踏むのか?ここでは非常にシンプルな手法を例にあげて紹介したいと思います。
まずは、ブランドに携わる複数部署の方数名に参加いただき、第三者(例えば弊社)を含めたワークショップやディスカッション形式で、下記の順番で合意を取りながら進めます。
①ターゲットの設定
②価値抽出
③プロトタイピング
通常このような進行の場合「勉強会」のように捉えている方が多いのですが、私たちは何よりも「楽しみながら考える」ということを優先します。いつもと場所を変えてみる、面白おかしく自己紹介をする、合間にチームで行うゲームを挟むなど、一見関係の無い事のように思えますが、場作りをする上で非常に重要なポイントであり、結果、与えられるのではなく、自ら積極的に楽しんで参加する姿勢を作ることができます。
どんな人にブランドを好きになってもらいたいか?をまずは明確にします。年齢はもちろん、家族構成、趣味嗜好、暮らしの様子。場合によっては雑誌を切り取って可視化し、積極的に意見を出し合いながらターゲットを具体的にしていきます。
そのブランドの価値は何なのか、徹底的に議論します。「機能的価値」は?「情緒的価値」は?
この議論での最も大切なことは「ターゲットが共感する価値」をメンバー全員で見つけること。
私たち(第三者)も参加しながら意見を発散いただき、徐々に価値を絞り込んでいきます。
①②で重要なポイントは、決まっていく内容を、図にしたり、言葉にしたり、絵にしたりと、随時「可視化」すること。
文字だけの「議事録」では、後々誰も見なかったり、前回どんなディスカッションをしたか覚えていないことが多くなりがちですが、決まった内容を、図や言葉や絵に私たちが「可視化」することで、誰もが瞬時に理解でき、齟齬が生まれにくい状況を作ることが可能です。これはブランドに関わる皆さんの共通認識を作る上で、非常に重要なポイントです。
ここが非常に重要なポイントで、②で抽出した価値を「可能な限りシンプル」に可視化します。
「一言にする」「象徴的なマークにする」「ステートメントを作る」「写真で佇まいを見せる」など、様々な手法があります。
なぜシンプルにする必要があるのか?
それはそのブランドが自分たちから離れても、何も知らない部外者へ確実に伝わらなければならないからです。「伝わる」ということは伝言ゲームと同じです。
例えば、上司から部下へ、メーカーから顧客への情報伝達は、内容が複雑であればあるほど、違った伝わり方をします。シンプルであれば、伝わり方に不純物が入りにくくなり、ストレートに伝わっていきます。どんなにいい価値が抽出できたとしても伝わらなければ全く意味がありません。
相手企業や生活者に想いを届けることは勿論、まずは組織内のメンバー全員が同じ想いを持って同じ方向へ進めるように想いをわかりやすい形に(シンプルに)することで初めて出発点に立てるのです。
最近お手伝いさせていただいた、あるナショナルクライアントのサステナブルブランドの構築プロジェクトにおいても、プロジェクトの中で感動を作ることができた結果、商談を始めてすぐに多くの反応があり、全国規模のショップ展開が決定。
さらに、今も大手各社から問合せがある状況を作ることができました。これは、「シンプルに価値が伝わった」ことにより、うまく共通認識を作れ、それによりブランド関係者のモチベーションアップに繋がったことが要因のひとつです。
社内でブランド価値の共通認識が作れると、その後のサプライチェーン「メーカー→卸→流通(販売店)→顧客」の中に存在する商談(接客)コミュニケーションも、不純物が入らないストレートな伝わり方が可能となります。
YRK&のブランドデザインは、ブランドに関わる全ての部署の方と一緒に合意をとりながら進めることを得意としており、強い共通認識を作ることに成功しています。
その結果クライアントから頂く言葉としては、
「今までにない一体感の上で、ブランドの軸を作ることができた」
「他部署の考え方を知るいい機会になった」
「来週のディスカッションも非常に楽しみ」
「ブランド戦略パートナーとして今後の戦略構築を是非一緒に考えて欲しい」
等、ありがたいお言葉を沢山いただけるようになりました。
私たちのコンサルティングは単に「解決策を提示」するのではなく、「クライアントの皆様と一緒に解決策を探し、感動を生みながら皆様と一緒に強いブランドを創りあげていくこと」を得意としています。
逆説的に言えば、「解決策を提示」するだけのブランド構築は弊社のアウトプットには存在しません。強い価値を見つけ、可視化し、伝える。皆様と一緒に強いブランドを作るお手伝いができることを楽しみにしております。