2022.02.25
リブランディングは、八岐大蛇です。いろんなアウトプットが存在し、そのプロセスや手法は様々ですが、本質はひとつ。八岐大蛇の体の中には、草薙剣が潜んでいます。ひとたびこれを手に入れれば、事業にとって最高の武器になるのかもしれません。
日本で取り入れられているリブランディングは、残念ながら間違いだらけです。厳しい言い方ですが、一般的にリブランディングとして定着しているのは、広告の延長線上での印象ピボットや、デザインの変更に留まってしまっています。それらは、リブランディングにとっては氷山の水面の上の部分の話。リブランドの一番重要な部分は、その下層部に存在するあらゆる複合的な要素を一つずつ改善していくことなのです。
「つくって、売る」ということが前提になっている日本のメーカーの組織は、高度経済成長期に活躍した、大量生産型のモデルであることが多いと感じます。もちろん、まだまだその構造で売り上げを伸ばすこともできますし、特にマスな商品においては、効率のいい進行で、スケールも見込める有効な構造であることは間違いありません。しかし一方で、やはり部門最適の思考が働き、一貫した新しい施策は進みにくいのが悩ましいところ。事業部は横糸、チーム活動は縦糸。横糸と縦糸が組み合わされば、繊維と同じで会社は強くなります。
スキル重視、年功序列、内製主義という3つの大きな論題があります。それぞれにもちろん賛否はあり、一概に否定すべきものではありません。しかし一方で、日本の停滞は、グローバルに見ると、企業やブランドにも明らかな差として現れてきています。これは、今までの日本経済で通用してきたことが、現在の状態に合わなくなってきている何よりの証拠であることは間違いありません。
リブランディングを進めていく上では、「自立型人材」を育て、そしてそれが表に出ていくような状況を作る必要があります。本来、リブランディングの第一歩は、ここから始まるはず。スキル重視で急成長して来た事業や部門は、アプリケーションを作るのは上手だが、肝心のOSが弱い、なんてことがあちこちで起こっています。変化への対応が遅れるのはこのため。重要なのはOSが鍛え抜かれた人材。スキルだけではイノベーションは起こりません。すなわちリブランディングは推進しにくいのです。
年功序列では、そのせっかく育った人材が埋もれてしまう可能性があります。つまり、良いブランディングプロジェクトが、若手の力で成立しにくい。
そして、内製主義ですが、特に上層部の方々は、コンサルティングや、プロジェクトのアウトソーシングを恐れる傾向があります。これは、かつての「言うだけコンサルティング」の時代の悪しきイメージが残っている経営者が多く、良い思い出がないことにも起因します。結果として、会社の中で考えなさい、となりやすい。
もちろん社内で解決できることはすべきです。しかし、日本中に存在するいろんな分野のプロの力を結集することは、短期的にはコスト(費用)がかかっても、長期的には必ずインベスト(投資)に変わっていくはずなのです。
実は、これが一番深刻な壁です。いま、トップアジェンダと呼ばれる経営の優先的な課題は、事業開発(特に新事業開発)、組織設計、システム化(デジタルシフト)、採用、事業承継、資産運用、投資計画、収益構造改善、SDGsなどがあげられます。ここに、「ブランディング」という横文字は、残念ながらあまり出てこない。その原因はいくつかあります。
①概念的で捉えにくい。②解釈が人によって違う。③直近の業績への跳ね返りが想像できない。などが代表的な理由です。つまり、まずはブランド価値を向上させるとどうなるのか、なぜブランディングが必要なのか、のリテラシーを上げていくことが重要です。
実は、リブランディングに必要な活動は他にもまだまだ存在します。今回は、「間違いだらけのリブランディング」と題しましたが、これらは大抵「アウトプット(演出的な要素)」にとらわれてしまっていることに起因しています。「本質的に事業を再構築する」というところに立脚したリブランディングは、人材、組織構造、思考の変革など、根本的な改革と同時に進めていく必要があり、演出的リブランディングとは、全く進め方が違うのです。
YRK&は、リブランディングの専門会社です。それぞれの企業様の本質的な問題を発見することからスタートし、ブランドの見え方はもちろん、思考の変革、作り方、動き方、成長のさせ方の改善まで、全てに伴走していきます。皆様の持つ本質的な課題を我々とご共有いただき、一蓮托生で支援していくことが我々のスタンスでもあります。日本の素晴らしいものづくりの力を、本当の競争力に変えていくために、これからも尽力して参ります。