TOPICS
「共感・共鳴の経営」をテーマとし、ブランディング経営を学ぶリアルビジネスイベント『Brand Growth Meeting』が2023年3月14日(火)に開催されました。
チャプター③では、「ブランディングの本質と具体的な戦略・戦術」をテーマに、Starbucks/SABONを成長させた立役者、ノスプロダクター株式会社代表取締役副社長 黒石氏と、たねやグループCEO 山本氏によるトークセッションが行われました。本レポート記事では、セッションのほんの一部ですが、ご紹介いたします。
黒石氏からは、スターバックス時代の「働くモチベーションの作り方」についてお伺いしました。「最も重要なことは、自分の存在意義を感じてもらうこと。“あなたがいてくれて助かった” “ありがとう”といった言葉を掛けたり、アルバイトをパートナーと呼ぶなど、従業員に対する向き合い方や姿勢を日々のコミュニケーションで意識している」と語ります。
山本氏は、たねやで働く従業員の共通点は「お菓子が好きなこと」であるとおっしゃられます。「自然に学ぶ」をコンセプトにしてきた「たねや」だからこそ、面接ではクラブハリエのフラッグシップ店舗である近江八幡の「ラ・コリーナ」を訪れて感じたことを、自分なりの言葉で話してもらう。それを聞いた上で採用するかを判断されているそうです。
また、たねやでも、入社して1年間はマンツーマンの教育体制を取り入れています。教育係は入社して2年目の若手社員に任せており、掃除や挨拶の仕方についてみっちり指導します。社歴の浅い人間が教えることで、失敗した経験を鮮明に伝えることができ、教える側としての成長にも繋がるのだと、おっしゃられました。
地元である近江八幡の方々がつけてくれた“たねや(種屋)”という名前を、先代から受け継ぎ、大切にしてきたと語る山本氏。自社のブランディングについても、「今後は新しくブランドを作るのではなく、まずは、たねやの中でできることをしていきたい。ブランディングとは、一生懸命に美味しいお菓子を作り続けて商いをしていると、自然と出来ていくものであり、しようと思わない方が結果的に良いブランドに成長していくものなのかもしれない。」とおっしゃられました。
「世界中でサボンらしさを語れるのは、創業者であるアヴィ・ピアトクしかいない。」ブランディングを考える上で、あえて“らしさ”を語らない黒石氏。「イスラエルの人々が死海の塩を使って、自然のミネラル豊富なところだけを化粧品に変えていく。これを日本流にアレンジするなんておこがましくて言えないです。」製造者の思いを日本のお客さまに伝えるために、スタッフがイスラエルの製造工場を手伝うこともあるという。「中途半端にサボンらしさを語るのではなく、究極の販売員を作っているに過ぎない。その上で、我々のミッションは、とあるおじいちゃんが泥だらけになって、お風呂入る手前にサボンを持った時の「ニヤッ」っていう顔を作ること。このシーンを作ることが我々の最大のミッションだ。」と続けました。
山本氏は、コロナ禍のたねやの経営状況について、一度は売上が0になるなど、かなり厳しい状況であったと語ります。当時約2,000人の従業員を抱えていた「たねや」にとってはかなり厳しい状況であったが、それはマイナスな面だけでなく、プラスな一面もあったとおっしゃいます。山本氏は、「今まで受け身であった従業員が、どうすればお店にお客さんが来てくれるかを自ら考え、動き出したんです。嬉しいことに、お客さまからも、今日、店閉めてるから誕生日のケーキが買えへんとか、この晴れの日のお祝いのお菓子を買えへんって言って、沢山電話や手紙を頂戴しました。自分達が世の中に必要とされているんだと、実感した瞬間でした。そこから自ら動こうと決心し、期間限定でJRやデパートへ出店したり、同時にEC販売も加速させたんです。」とおっしゃられました。コロナ禍の厳しい状況を悲観するのではなく、原点に立ち戻るきっかけとして前向きに捉えて行動にうつされてきたようです。
上場して直後、2年連続で赤字になったスターバックス。
苦境の中、業績をV字回復させ、ブランドを成長させるために行なったのは、宣伝や広告をむやみに打つことではなく、「365日お客さまの笑顔を作っていく為にオペレーションを回し、販売スタッフが輝けるような良いサービスを提供すること」と語ります。
また黒石氏は、ブランディングの“答え”として、シーン作りが最も重要であるともおっしゃられました。お客様とスタッフの中に、一つの商品を作り、シーンを作っていく。このシーンを作り続けることがブランディングには非常に重要だと教えていただきました。
日本の老舗ブランドである「たねや」を経営する山本氏は、海外ブランドが日本へ進出してくる現状を肯定的に受け止めており、海外ブランドの新しいやり方などがすごく刺激になっているとお答えになりました。「海外から来るブランドみたいなものを敵視したり、あるいはコンペティターという風に位置付けるんではなくて、事業の味方にしてからヒントにしていく」と語られました。
黒石氏からも、「市場が違えば、お客さんのニーズも変わるので、テクノロジーもマーケットも変わる。そこにアジャストしていく形で、スタバもサボンも100年先まで日本のマーケットに存在していてほしい。そのためにはどうしたら良いか? これを毎日考えて、ディスカッションを続けていきたい。」とおっしゃられました。
相も変わらず、今後も私はお菓子屋をやり続けていこうと思ってます。父親から社長交代した時言われたことは、“次の代を見つけろよ”と。それは同じように、私たちのスタッフにも“店長が決まったら次の店長も育ててへんかったらあかんでな”っていうことを、いつも言うようにしてます。
会社って、自分のものにしたらダメなんですね。ついつい儲かると、我が物のごとくして、代交代しても変わらなくて、いつまでも政権を握ってる方々がたくさんいらっしゃいます。
地球から、あるいは神様からほんの一瞬この会社をお預かりしてる。最終的にはその神様に地球にお返しするならば、今以上に綺麗な形でお返ししなければならない。そのためには「たねや」を、綺麗な形で存続させていくために、美味しいお菓子を作り続けていくつもりです。
100年、200年後にあの時に、先代(私)が良いことしといてくれたお陰で、今この木が桜咲いてるんや、って言ってもらえるような、そういう経営をこれからもやっていきたい、というふうに思います。
僕の生まれ故郷が大阪というのもありますが、関西には万博があり、IRがあり、観光資源が沢山ある。これをもっと輝かせて海外に向けて「どやっ!」って感じで打ち出していきたいですね。今まで僕は、イスラエルやアメリカのブランドを国内マーケットに浸透させる動きをしてきました。
なのでこれからは、日本がこれからもっと輝くものを、世界マーケットに展開し、通用するような手助けをしたいと考えています。その時に、単独で戦うよりは、複数の“面”で戦ったり、チームを作って連合艦隊で立ち向かうほうが良い。
そんな未来へ向かって連合を組むために、僕なんかを媒介にしながら活用していただけるなら、色んな方を紹介させていただきます。そして次の世代に誇りを持って「あいつ、おもろかったな」って、言われる人になりたいですね。
今回のトークセッションでは、黒石氏と山本氏にブランディングの本質について語っていただきました。ブランドづくりのヒントがいっぱい詰まったトークセッションの本編動画については、こちらより、視聴申込が可能です。ぜひ、ご覧ください。